【ライティングアシスタントチーム倉山工房・編集担当が語る制作書籍紹介】
コロナ禍が過ぎ去り、ほっと一息。
そんな今だからこそ、あらためてコロナ禍を考えてみませんか。
(4月11日発売)
我々はコロナ禍を経験した。コロナ禍では過去に経験していない多くの事が行われた。そして、その記憶は、既に風化し始めている。人はその時代に生きていても、数年も経てば記憶が薄れる。その時点では社会の常識だった事象も、忘れられていく。だからこそ、記録せねばならない。記録しなければ歴史に残らないから、史料が後世に存在しなくなる。
(「はじめに」by倉山満)
コロナ禍中の要人発言
『コロナ禍を記録する 後世に語り継ぐためのアーカイブズ』は、救国シンクタンクが、しがく総合研究所と倉山塾の協力により行ったプロジェクト「コロナ禍を記録する」を書籍化したものです。
コロナ禍の日本において、多くの論者が大メディアやSNSで発信を行い、世論形成に影響を与えてきました。
政府の意思決定に直接的に関わっている人であれば、私的な発言であっても、社会的・政治的影響力が大きいものです。
公文書に指定された文書には政府で保管する規定がありますが、それ以外には、保管の規定がありません。
紙媒体の図書ならば原則として国会図書館で保存する規定がありますが、インターネット上の発言は時間とともに消えてしまうものが多い。
とくに、個人が自由に発信できるSNSは、投稿が削除されることもあります。
そうなると、同時代的にはどんなに影響力のあった発言でも、後世には伝わりません。
コロナ禍後に生まれ、この騒動を経験していない世代がなにかを調べようとしても、もはや重要な史料が消失してしまって検証できないということにもなりうるわけです。
今現在でも、数年前に誰がどんなことを言っていたかなど、多くの人が忘れかけています。
本書は、インターネット上の私文書を収集し、保存しようという試みです。
調査対象者 医師・政治家14名
【医師編】
尾身茂
尾崎治夫
西浦博
忽那賢志
岩田健太郎
木下喬弘
長尾和宏
木村盛世
大木隆生
【政治家編】
河野太郎
小池百合子
吉村洋文
西村康稔
加藤勝信
医師の中では、尾身茂・尾崎治夫・西浦博の各氏はその言動が政府の政策決定に直接の影響を与えうる立場にあった。忽那賢志・岩田健太郎・木下喬弘の三氏は、民間人の立場で発信し、政府の政策を推進するのに影響力を持った。
これに対し、長尾和宏・木村盛世・大木隆夫の三人は立場を異にし、政府の方針に対して批判的な立場を取る少数派として紹介した。
政治家の、河野太郎・小池百合子・吉村洋文・西村康稔・加藤勝信の諸氏は、コロナ禍の最中にSNS で発信をしていた、日本政府閣僚あるいは大都市の首長なので、取り上げた。
(「はじめに」by倉山満)
話題の発言、失言、炎上コメントも収集
西浦博「8割おじさん」「約42万人死亡説」
西浦博氏は厚生労働省の新型コロナウイルスクラスター対策班の中心人物。大手メディアにも頻出していたので、その顔や名前は本書の調査対象人物の中でもよく知られているほうでしょう。
「8割おじさん」は自称
新型コロナウイルスの流行拡大を防ぐため人との接触を8 割減らすことを主張し、「8 割おじさん」として有名になりました。
でも、その「8 割おじさん」、実は自称だということ、けっこう知られていませんよね。
「約42万人死亡説」
2020年4月15日、「行動制限なしなら約42万人が死亡する」との試算を公表し、5大新聞やその他地方新聞に取り上げられ、注目を集めました。
その一方で、計算の根拠が曖昧であると指摘する人も。
高橋洋一「さざ波」発言の元は木村盛世!
高橋洋一内閣官房参与が「日本はこの程度の『さざ波』」とツイッター(現X)に投稿し、炎上。
でも、この「さざ波」は「正義のミカタチャンネル」(放送地域は関西・西日本)で共演者であった木村盛世医師の発言を引用したものらしい。
高橋氏いわく「『正義のミカタ』を東京でやらないからこういう誤解を生むんだよ」
西村大臣の“失言”
西村康稔氏は、当時、新型コロナウイルス感染症対策担当大臣。
2021年7月8日の記者会見で、酒類の提供停止や休業・時短に関する要請に応じない飲食店に厳しく対応すると発言。
さらに、こうした情報を金融機関とも共有し、順守を働きかけていくと述べました。
これに対して批判が相次ぎ、辞任を求める声も上がるほど。
その数日後の、お詫びメッセージ。
西村康稔氏のTwitter(現X)投稿(2021.07.11)
飲食店の皆様には、新型コロナ対策にご協力頂き感謝申し上げます。この度は、私の発言で、混乱を招き、特に飲食店の皆様に不安を与えることになってしまいました。何とか感染拡大を抑えたい、多くの皆様にご協力頂きたいとの強い思いからではありますが、趣旨を十分に伝えられず反省しております。
いま振り返ると新鮮
コロナ禍は、これまでにない体験でしたから、情報の接し方も人それぞれだったと思います。
大手メディアのニュースを見ていた人。
いろいろな情報をがんばって収集して余計パニックになった人。
誰の言っていることも信じられなくて関連メディアを一切見なかった人。
いずれであっても、今あらためて当時の言論を振り返ってみると、けっこう新鮮な驚きがあること、請けあいです。
また逆に、
「そんなことあったのか!?」
と新たな発見もあることでしょう。
問題提起の書
未知の感染症に対して、どうすべきか、答えのない中、各人が何らかの行動をとらなければなりませんでした。
医者は何かを言わなければならなかったのかもしれません。
政治家は何らかの結論をださなければならなかったでしょう。
誰が、どのように、正しかった、間違っていた、とは断罪できません。
書籍制作にあたっては、あくまで記録を残すことに徹し、価値判断は読者にまかせる記述を心がけました。
これは本来、国立公文書館の仕事だと思う。日本の国立公文書館は、一義的には公文書(こうもんじょ)の保存を行う機関である。公文書(こうもんじょ)は、公文書管理法では歴史公文書(れきしこうぶんしょ)と言うが、同じものだ。問題は、国立公文書館は私文書(しぶんしょ)を公文書(こうもんじょ)にする権限があるのだ。
ただ、政府の怠慢を責めるよりは、民間でできることをして補助して公益に供した方が良い。後世の模範とまでは行かないが、さきがけの仕事のつもりでプロジェクトを行った。
(中略)
誰が一貫して正しい言論を行っていたか。本書はあえて結論を示さない。本書だけでなく、本当はご自身で検証してほしい。
本書で使用したデータは、(一社)救国シンクタンクで公開の予定である。……それを利用し、本書の欠点を建設的に批判、論を発展させてほしいと考える。
(「おわりに」by倉山満)
『コロナ禍を記録する』関連配信番組
さざ波で緊急事態宣言!?日本は公衆衛生後進国~
ゲスト:元厚労省医系技官・一般社団法人パブリックヘルス協議会代表理事 木村もりよ