【ライティングアシスタントチーム倉山工房・編集協力担当が語る制作書籍紹介】
巷(ちまた)に流れる陰謀論は多々ありますが、「それ本当?」と思いませんか?
内藤陽介先生の『みんな大好き陰謀論』(ビジネス社、2020年)は陰謀論、とくにユダヤ陰謀論を斬りまくります。
日本タイトルだけ大賞にノミネート
本のタイトルはたいてい出版社さんが最後の最後、発売直前に決めるので、制作中は仮タイトルで呼んでいます。そのため、できあがったタイトルがあまりに違うと、出版後、本について尋ねられても、パッと言えないことがよくあります。
白い目で見ないでください。
しかし、この本は仮タイトルから「みんな大好き陰謀論」でした。もともと倉山満先生が軽いノリでつけたタイトルだったのです。
制作中から、ずっと「みんな大好き陰謀論」と呼んできたので、いつでもスッと口から出てきます。
まさか、この仮タイトルのまま出るとは思いませんでしたが、なんと、本当にそのまま出てしまいました。
言い出しっぺの倉山先生も「内藤先生、これでOK出したんですね」と、びっくりです。
著者である内藤先生ご自身はタイトルに強いこだわりがなく、「どうにでも付けてください」というスタンスだったようです。
しかし、このタイトルのインパクトは強かったようで、2020年の「日本タイトルだけ大賞」にノミネートされたほど。
倉山先生、スゴイ!
もちろんタイトルだけでなく、中身も面白いですよ!
ちなみに、かわいらしい表紙の絵は内藤先生の提案によるものです。
フランスの絵葉書で、現物には「陰謀」との文字が入っています。
本文中にも興味深い切手や郵便物が多数、紹介されています。
スーパー知識人、内藤陽介!
郵便学者
著者の内藤陽介先生は郵便学者で、とても切手に詳しい方です。
切手をはじめ手紙やはがきその他の郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く学問が「郵便学」だそうです。
博学多識
内藤先生は博学多識、著作多数、話術巧妙、なんでも知っているスーパー知識人、いわば、しゃべるアカシックレコードです!
アカシックレコードとは、日本語に訳すなら虚空蔵菩薩様ですね。
記憶力の神様、じゃなかった、仏様です。
インド哲学・宗教にある概念で、現在・過去・未来、すべてのことがわかる記録簿・記録所です。神智学のブラヴァツキー婦人や人智学のルドルフ・シュタイナーなどが、この概念をヨーロッパへ持ち込み、後に世界中に広まりました。
仏教に詳しい人なら、ことさら新しい概念ではなかったでしょうが、ヨーロッパ経由でカタカナになって入ってきたのでオカルト、ニューエイジ用語として定着しています。
要するに、内藤先生、何でも知っています。
世の中には「オレはこんなに知っているんだぞ~」とやたらとひけらかすウンチクおじさんがたくさんいますが、こういう人の知識はバラバラです。
関連性がない。
しかも、「そんなこと知ってるよ」みたいな話ばかり。
それに対して内藤先生のお話は、切り口が独特であり、かつ、すべてつながっています。
ひとつのテーマについても次から次へと出るわ出るわ。
それで、ご著書には極端に長いものがあります。
最高峰は『チェ・ゲバラとキューバ革命』えにし書房、2019年。
なんと二段組で690頁! これはもう、ほとんど事典です。
でも、内藤先生のお話は論旨明快、簡にして要。
「長い」ことと「簡にして要」は矛盾する?
いえ、もし内藤先生以外の人が同じようなことを書こうとしたら、文字量はさらに増えることでしょう。
なお、『みんな大好き陰謀論』は240ページ。
普通の本です、念の為。
実はイスラムの専門家
内藤先生、あまりにも博学なので、言われないと何が専門なのかよくわからない。
実は、イスラム圏の研究者です。
残念ながら『みんな大好き陰謀論』はユダヤ陰謀論、なかでも欧米における反ユダヤの歴史が中心なので、イスラム圏の話はあまり出てきませんが、専門でなくても、知識の泉から大判小判(?)がザックザク!
内藤先生の少年時代の話や「郵便学」についてなど、個人的な謎が解けるインタビューについてはこちら↓をどうぞ!
ユダヤ陰謀論を斬る!
『みんな大好き陰謀論』では、いろいろな陰謀論を扱う案もあったのですが、ユダヤ陰謀論があまりに豊富かつアクチュアルな問題を含んでいたので、ユダヤ一本でまとめることになりました。
ユダヤ人といえば、政財界、文化界、とくに映画産業や報道メディアの分野で活躍する人が数多くいます。
また、その人口規模の割に、多数のノーベル賞受賞者を輩出しています。
例えば:
そして、特に金融界に著名人が多いものですから、「世界はユダヤ人が支配している」などと、よく言われます。
たしかに、世界的に影響力のあるユダヤ人は多い。
しかし、何でもかんでもユダヤ人のせいにするのはどうなんでしょう?
巷にはユダヤ陰謀論が蔓延しています。しかし、ほとんどの説は怪しいものです。
一般的には、ユダヤ陰謀論の大雑把なところを聞き知っていても、細かい内容までは知らない人がほとんどでしょう。
かなり詳しく知る人も、さほど信じてはいない。
きっと、そんな人が多いでしょう。
一方、ユダヤ陰謀論を本当に信じていて、国際金融資本=ユダヤ人は悪い人だと決めてかかっているマニアックな人もいます。
この「国際金融資本=ユダヤ人」という図式も怪しいのですが、詳しくは本で!
ホロコーストの悲劇で反ユダヤ主義はタブーに
欧米では戦後タブーとなった反ユダヤ主義
欧米では幾度もユダヤ人が迫害されてきました。
そして、その頂点とも言えるのがナチスによるホロコーストです。
犠牲者の数は諸説あるようですが、何百万人もの人びとが殺害されました。
このホロコーストの反省から、欧米では反ユダヤ主義は一種のタブーのようになっています。
『アウシュヴィッツの手紙』
内藤先生には、ナチスによって建設されたユダヤ人絶滅収容所の中でも超有名なアウシュヴィッツをめぐる著作『アウシュヴィッツの手紙』(えにし書房)があります。
収容所以前のアウシュヴィッツから戦後ポーランドまで、知られざるアウシュヴィッツを描く力作です。
『みんな大好き陰謀論』とあわせて読むと、理解が深まるのではないでしょうか。
反ユダヤ主義のない日本にユダヤ陰謀論が蔓延
日本に欧米のような根の深い反ユダヤ主義はない
日本には、ユダヤ人がいなかったので、反ユダヤ主義もありませんでした。
一方、反ユダヤ主義による弊害や悲劇も詳しく知らないことから、近現代になって入ってきた反ユダヤ思想を鵜呑みにして、不用意な発言をしてしまう人がいます。
それでも、欧米にある(あった)宗教的反感に根ざした反ユダヤ思想は、やはり日本には今もない。
反ユダヤ主義の歴史を知り、不用意なトラブルに巻き込まれないようにしよう
人々が国際的に移動する現代でも、日本にはユダヤ人があまりいないので、たとえ反ユダヤ主義的なことを言っても問題になりません。
日本語の壁もあり、日本での発言が世界の注目を浴びることも少ないでしょう。
でも、有名人がその手の発言をしたら、翻訳されて世界に伝えられ、反ユダヤのレッテルが貼られてしまうかもしれません。
一般人でも、外国に行ったとき、無知から何気なく言った言葉が、反ユダヤととられるかもしれません。
「日本の常識、世界の非常識」などと言われて久しいですが、そんな失敗をしないためにも本書『みんな大好き陰謀論』はオススメです。
どこまでが本当で、どこからがウソなのかが、やさしく書かれています。
本書をお読みいただければ、いわゆるユダヤ陰謀論がいかに荒唐無稽なものであり、歴史的に社会を蝕んできたか、十分におわかりいただけるはずです。(「はじめに」より)
ユダヤ問題では、日本は、本来まったくニュートラルなのですから、健康的な社会をわざわざ蝕まないようにしましょう。
『みんな大好き陰謀論』紹介動画
以下は『みんな大好き陰謀論』の紹介動画です。
2020年8月7日配信「みんな大好き陰謀論」
↑冒頭で触れられているように『みんな大好き陰謀論』は、もともとチャンネルくらら配信の「きちんと学ぼう!ユダヤと世界史」を本にしようという企画からスタートしました。
残念ながら諸事情あって、該当動画の多くは非公開となっています。
2020年8月14日配信「ロシア革命はやっぱり○ダヤ!?」
「共産主義はユダヤの思想」と言われることも多いのですが、実はどうなのか、その辺も本では詳しく書かれています。
内藤先生の番組、ブログ、新刊紹介
『世界はいつでも不安定 ―国際ニュースの正しい読み方』
ネット配信チャンネルくららでは、毎週「内藤陽介の世界を読む」が配信されています。
番組の中から『世界はいつでも不安定 ―国際ニュースの正しい読み方』(ワニブックス、2021年)が生まれました。
ブログ
「郵便学者・内藤陽介のブログ」では、密度の高い内容の記事が、ほぼ毎日投稿されています。
ぜひ内藤先生の博覧強記ぶりをご堪能ください!
『陰謀論 II』
『みんな大好き陰謀論』が好評だったので、2021年5月に続編が発売となりました。
『誰もが知りたいQアノンの正体 みんな大好き陰謀論II』!
「世に陰謀論の種はつきまじ」というわけで、新手の陰謀論に再び内藤先生がどう斬り込むか、乞うご期待!
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
なお、本ブログは個人ブログであり、サイトの記述には著者とは異なる視点も含まれます。