「金髪はセクシー」と言われますが、不思議に思いませんか?
髪の色でセクシーかどうか決まるものでしょうか?
今回は「金髪はセクシー」の謎に挑みます!
後半は今でもゲルマンな(?)ドイツ人たちについて。
金髪はセクシー?
「金髪はセクシー」と初めて聞いたときには、まったく理解できませんでした。
日本人なら、エキゾチック美人に惹かれるというのはわかります。今でこそいろいろな髪の色がありますが、昔の日本人の頭は、黒か白か何もないかに決まっていましたから。
でも、「金髪がセクシー」と言うのは、むしろ欧米人ではないでしょうか。そこが長年の疑問でした。
意外と少ないブロンド
古代ローマの歴史家タキトゥス『ゲルマニア』にはゲルマン人の「髪は燃えるがごとき金髪」であると書いてあります。
1~2世紀のゲルマニアには金髪の人が多かったのかもしれませんが、現代ドイツには明るいブロンドの人は意外と少ないように思います。
『紳士は金髪がお好き』
「金髪はセクシー」の謎、ドイツ暮らしで解消しました。
実は、明るいブロンドは子どもの特徴なのです。
幼稚園や小学校低学年ぐらいの子どもにはプラチナブロンドのような淡~い髪色の子がいます。
しかし髪の色は大人になるにつれてだんだん濃くなります。
明るいブロンドがダークブロンドに、ダークブロンドが黒髪になったりします。
色の変化には個人差があり、あまり変わらない人もいます。
ただ、髪の色は概して暗くなり、その逆はない。
欧米人は経験的にそれを知っていて、ブロンド=若い=セクシーと感じるのではないでしょうか。
実はブロンドではない金髪有名人たち
セクシーな金髪美人と言えば古くはマリリン・モンロー。
そのものずばり『紳士は金髪がお好き』というタイトルの映画(1953年)もありました。
そのマリリン・モンローも地毛はブルネットです。
デビュー当初マリリン・モンローの再来と言われたマドンナもブルネット。
ブロンドをトレードマ-クのようにしていてバンド名も「ブロンディ」のボーカル、デボラ・ハリーの金髪も天然の色ではありません。
アンゲラ・メルケル(ドイツ首相)もヒラリー・クリントン(元アメリカ合衆国国務長官)も昔の画像を見ると、濃い髪の色をしています。
ダークブロンドはブロンドではない!?
あるアメリカの映画監督が「ダークブロンドはブロンドではない」と言ったことがあります。
「ブロンド」を「希少」と読み替えたら、理解できるような気もします。
ダークブロンドはたくさんいますが、北ヨーロッパに位置するドイツでも淡いブロンドの大人(特に女性)は染めていることが多いとの印象がありました。おそらくアメリカも同様ではないかと推測します。
ブロンドは化粧ばえがする
「金髪がセクシー」なもう1つの理由は化粧でしょう。
髪がブロンドの人は、体毛がすべてブロンドですから、まつ毛も眉毛も当然ブロンドです。
スッピン状態では、ほとんど毛が見えませんから、とても薄い顔に。
逆に化粧をすると「化粧しました」という顔になります。
よく言えば化粧ばえがする。悪く言えばケバくなる。
そんなところも金髪がセクシーと言われる理由のひとつではないでしょうか。
現代にも通じる『ゲルマニア』
「燃えるような金髪」の人は少なくなった現代ドイツですが、タキトゥス『ゲルマニア』の他の部分を読むと「今でもそうじゃん」と思うところ、けっこうあります。
渇きと暑さに弱い
例えば、ゲルマン人は「図体は大きくて、発作的な行為にのみ馬鹿力を奮い起こす。一定の労務とか辛酸となると、体に相応しただけの忍耐力を示さない。渇きと暑さに堪えることには全く慣れていないが、寒さと餓えとには気候や土地柄のせいであろうか、平気で堪えるのである。」
現代ドイツ人も、のどが渇いたと言ってコーヒーや水、ジュース類をガブガブ飲みます。南ドイツならビールかも。それでトイレに行く頻度が高いわけでもないのが不思議です。
また日本人が長袖にカーディガンを羽織るような涼しい気候でも「暑い、暑い」と言って半袖で汗をかいています。
机などを叩いて賛同
会合などで「もし提案が気に入らなかったらやかましくわめき、それを一蹴する。もし気に入ったらフラメアを打ち鳴らす(手槍で楯を打つこと)。この武器による称賛こそ賛意を表す最も名誉ある形式である」
この箇所ではドイツ人の「拍手」を思いだしました。
両手を合わせて音を出すふつうの拍手もしますが、会議などの場合、手で机をコツコツ叩く人もいるのです。
最初は抗議かブーイングかと思ってギョッとしましたが、「ブラボー」の一種でした。
楯を叩いていた「ゲルマン人」時代からつながっているのか、別起源なのか、断定は避けますが、なんか似ている……。
「ゲルマニア」と「アグリコラ」
ちくま学芸文庫は『ゲルマニア』と『アグリコラ』が一冊になっています。それぞれ100ページ程度なので、すぐに読めます。
『ゲルマニア』では現在のドイツから東欧にかけての地域について。
『アグリコラ』ではブリテン島について描かれています。
『アグリコラ』はタキトゥスの義父(妻の父)グナエウス・ユリウス・アグリコラの伝記です。義父はブリタニア(現イングランド)総督だったので、ブリテン島の様子も描かれているのです。
世界史で習うタキトゥスの『ゲルマニア』、読まねばと思いつつ、今まで読んでいなかった本でした。読んでみたら「金髪」にひっかかって金髪エッセイを書いてしまいました。
古典なんて堅苦しいと思われるかもしれませんが、意外と気軽に読めます。
読書の秋にいかがでしょうか。
ちなみにアグリコラとはラテン語で「農民」という意味で、こんなボードゲームがあります。
ドイツ生まれのヒット作。自分の土地を豊かにしていくのを楽しむゲームです。舞台は古代ローマ帝国ではなく17世紀ヨーロッパなんですけどね。
それにしても「アグリコラ(農民)」なんてタキトゥスのお義父さん、変な名前ですが、もともと父親が子どもにつけたあだ名で、以後これが家名となったのだとか。
ローマ人の名前、けっこういい加減です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。