ドイツ語畑育ちですが、「やっぱり英語」「やっぱりボキャブラリー」と思い、2022年は英単語のボキャビルに力を入れてみました。
つくづく、英語教材は豊富にあっていいですね。
ドイツ語は中級以上の教材があまりないので、書店で英語の棚を見たり、アマゾンや楽天などで検索したりすると、思わず「うらやましい~」。
それはありますね。
アルクの英単語集『POWER WORDS』『究極の英単語』
標準語彙水準12000
アルクは語彙リストSVL (Standard Vocabulary List、標準語彙水準)を作っています。
「日本人学習者にとって最も有用な英単語を全12段階にレベル分けした語彙リスト」だそうです。
超上級 ネイティブも驚く語彙マスターになる!
レベル 12 | 世界をさらに広げる英単語 |
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レベル 11 | 自分の視野を広げる英単語 |
レベル 10 | 英文雑誌を楽しめる英単語 |
上級 英字新聞・雑誌がスラスラ読める!
レベル 9 | TOEIC高得点を狙う英単語 |
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レベル 8 | 読解の自信を深める英単語 |
レベル 7 | 表現力を豊かにする英単語 |
中級 TOEICテスト高得点を狙う
レベル 6 | 検定試験に挑戦する英単語 |
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レベル 5 | 大学受験前に覚える英単語 |
レベル 4 | 読解の基礎を固める英単語 |
初級 日本人に必須の英単語
レベル 3 | 楽しく会話がはずむ英単語 |
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レベル 2 | 日常生活で活躍する英単語 |
レベル 1 | 英語の基礎をなす必須単語 |
1~12レベル別のキャッチフレーズは、『POWER WORDS』より、
初級・中級・上級・超上級に関しては『究極の英単語』より転載しています。
(各シリーズについては後述)
『POWER WORDS』(絶版)ではレベル9が「TOEIC高得点を狙う英単語」でしたが、『究極の英単語』では中級(レベル4~6)が「TOEICテスト高得点を狙う」になっています。
おそらく「高得点」の定義が変わったのでしょう。
どの段階が何点に相当するかは『究極の英単語』(後述)の項を参照してください。
単語学習教材は山とあるけれども、ぶっちゃけ、どれも似たりよったり。
いろいろ買ってしまうと、重複も多かったりします。
その点、1000語 ✕ 12レベル = 12000語あるアルクの単語帳なら、大は小を兼ねる!
『POWER WORDS』シリーズ
ボキャビルをはじめるにあたって、まずは、すでに持っている単語集を引っ張り出して、再挑戦!
古いが良書
今は絶版となっているようですが、あえて紹介します。
標準語彙水準レベル1からレベル12まで各レベルに2冊、つまり一冊に500語が収録されている英単語集です。
各冊CD付き。
いまでも中古なら手に入ります。
もともと各700円程度でしたが、2023年現在、数千円の値段がついているようです。
12000語をコツコツ積み上げられる
単語ひとつに例文ひとつ。それぞれ和訳がついているというオーソドックスな作り。
現在主流の単語帳のようにカラフルでもない。
しかし、自分がどの程度単語を知っているかの目安がつかめます。
英語教材はすばらしいですね!
ドイツ語に、1万語も面倒をみてくれる教材はなかったし、今もたぶんない。
購入したのは、20年以上前。
当時、単語帳で単語を覚える気は実はなかったのでした。
自分の語彙数を測りたかったからです。
知っている単語にチェックを入れれば、だいたい計算できます。
ボキャブラリーがチェックできるサイト
今は便利なもので、自分のボキャブラリー数がチェックできるサイト(→こちら)があります。
当時、こんなテストがあったら買わなかったかも。
なぜ今、英語?
英語を使う必要は基本的になく、英語学習のモチベーションはありませんでした。
インターネットが普及し、いろいろな情報があふれているように見えますが、欲しい情報はなかなかなかったりします。
そして、英語が一番、情報が豊富なんですよね。
言語が違うと同じ事柄についても見方が異なって興味深いこともあり、
「やっぱり英語」とボキャビルにトライ!
ボキャブラリーが豊富だと何かと便利……かも
最初は「無味乾燥な例文で覚えられるのか?」と疑問に思っていましたが、何度か触れると、何らかの印象は残るもの。
そして、文中に見たことのある単語が出てきたときに、まったく初めて見聞きするのとは大違いです。
文章や会話など自然な文脈で覚えたほうがいいのは確かですが、それには膨大な量の英文を読んだり聞いたりする必要があるでしょう。
今は電子辞書やインターネットで調べることができ、紙の辞書よりはるかに速いですが、それでも調べて適切な意味を見つけるのは手間がかかります。
可能なら、わからない単語をガーっと覚えたほうが効率がいい……。
『究極の英単語』シリーズ
POWER WORDSシリーズは残念ながら絶版となっていますが、12000語の語彙リストは『究極の英単語』(4分冊)の中に生きています。
超上級Vol.4 レベル10~12 | ネイティブも驚く語彙マスターになる!(超上級の3000語) |
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上級 Vol.3 レベル7~9 | 英字新聞・雑誌がスラスラ読める!(上級の3000語) |
中級 Vol.2 レベル4~6 | TOEICテスト高得点を狙う(中級の3000語) |
初級 Vol.1 レベル1~3 | 日本人に必須の英単語(初級の3000語) |
リストは同じなので、各レベルの単語はPOWER WORDSと同じですが、例文はリニューアルされています。
TOEICテストスコアとの対照表があり、各段階をマスターすると、
TOEIC | 英検 | |
超上級 | (空欄) | (空欄) |
上級 | 860点 | 1級 |
中級 | 730点 | 2級~準1級 |
初級 | 470点 | 準2級 |
に相当するのだそうです。
そこで、上級までのボキャブラリーがだいたい頭に入ったかな、というところで市販のTOEIC模試(『TOEIC L&Rテスト本番模試1回分』旺文社)を受けてみました。
結果は870点ぐらいでした。
本物のTOEICではないし自己採点なのですが、いちおう時間を計ってちゃんとやったつもりです。
『POWER WORDS』『究極の英単語』比較
同じアルクの12000語でも旧版『POWER WORDS』は単語ごとに例文がありましたが、新版『究極の英単語』は、ひとつの例文に覚えるべき単語を複数入れ込んでいます。
『POWER WORDS』では、覚えるべき単語以外のわかる部分が、単語のイメージを限定するという例文本来の役割を果たしていましたが、『究極の英単語』の例文は、わからない単語複数からなる文章となり、単語のイメージが固まりにくくなりました。
しかも、各レベルの約半分の語彙は以下のように例文なし。
単語と対応する日本語、「使い方」として2~3語のフレーズが併記されていますが、これで覚えるのは難しいし、印象にも残りにくい。
Vol. 1~2は1760円、Vol. 3~4は1980円、POWER WORDSを全巻揃えるよりは安いですが、その分、質も落ちたという感じ。
しかも『究極の英単語』音声CD-ROMは別売3300円。
(値段は税込み。2023年現在)
「全12000単語・2184例文収録」ということで、一部だけ買うということはできません。
POWER WORSは各巻にCDがついていたので、そちらのほうがフェアでしたね。
POWER WORDSを全部そろえておけばよかった
正直なところ単語を覚えるには『究極の英単語』より、『POWER WORDS』シリーズのほうがよかった。
当時、11以上は難解に見えたし、買うなら、レベル10程度の単語を覚えてからと思っていたのでした。
泣泣泣!
12000語の網羅的リストアップは最強
いろいろと文句をつけてしまいましたが、12000語の網羅的リストアップはありがたい。
他社の単語集は大なり小なり『究極の英単語』シリーズの部分集合にすぎないと言っていいでしょう。
「TOEIC受験」や「大学受験」など特定の試験に特化した勉強をしたい人は、その目的を掲げた単語集がいいかもしれませんが、一般英語を勉強したい人は、偏りの少ない幅広い語彙を勉強したほうがいい。
それで、アルクの単語集を冒頭に紹介した次第です。
『究極の英単語プレミアム』
同じくアルクから出ている『究極の英単語プレミアム』は、名前は似ていますが『究極の英単語』とは別物で、マニアックな単語を収録した本です。
Vol. 1とVol. 2の2冊あります。
本の帯によると、
Vol. 1 ネイティブ知識人なら当たり前につかっている難関語彙を厳選
Vol. 2 ネイティブ知識人をもうならせる超難関語彙を厳選
著者による責任編集
POWER WORDSや『究極の英単語』はグループ編纂のようですが、この『プレミアム』は著者名(向江龍二)が出ています。
筆者は約20年間にわたり米国生活を送ってきましたが、その間の8年間はコロンビア大学大学院で政治学を勉強し、政治学博士号を取得しました。コロンビア時代、論文に使えそうな、あるいは日常生活に役立ちそうな英単語・表現を大学ノートに書きとめてきました。
(『究極の英単語プレミアムVol.1』「はじめに」より)
たしかに特定の英単語を覚えさせるために、わざわざ例文を作ったような感じがなく、本物感が伝わってきます。
本の名前から標準語彙水準12000語の追加版だと思って買ったのですが、全く異なった企画らしく、かなりの単語がリストの12000語と重複しています。
細かく数えたわけではありませんが、ザッと4分の1から3分の1ぐらい。
ただ、収録単語が同じでもコンセプトが違うので、違う角度から学習できます。
味のある単語の選択と説明
やさしい単語であっても「こんな意味もあるよ」とひと味違った単語紹介がされています。
たとえばtable(テーブル), factor(要素), square(正方形)は基本単語ですが、『プレミアム Vol.1』にあるのは、以下の用法。
table ①(議論のために提案を)提出する。②(議題を)棚上げにする
factor in ~を考案に入れる
square with ~と一致する・織り込む
重複する単語も、例文はこちら『プレミアム』のほうがいい。
ある程度ボキャビルしてから
ボキャビル前に見たときには「こりゃアカンわ」という感じ。
上級語彙が出てくるような上級表現の例文なので、当の単語だけでなく、文章が全体的に難しめ。
これを読む段階ではないと思いましたね。
でも、数ヶ月のボキャビル後に本書を見たときには、これを読んでも意味があるかなと思えるようになりました。
思うのですが、ボキャビルをするにあたっては、あらかじめ何か難しめの本や映像を見ておくといいでしょう。
数カ月後、それを読んだり、聞いたりすることで、自分の進歩を確認することができます。
まったくの初級者は500語、1000語で世界が変わりますが、中級以上になると、いくら覚えても、真っ暗なトンネルの中を歩かされているようで、行けども行けども光が見えません。
モチベーションを保つためには、進歩が確認できるものが必要です。
チェックの数が増えていくことでも進歩が見えますが、「だから何?」というところを確認したい!
ボキャビルの前・中・後に、小説でも記事でも何でもいいんですが、同じ文章に当たってみると、実感がわきます。
TOEICに特化された『金フレ』『銀フレ』
多くの英語学習者に支持されているのが、
- 『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』
- 『TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ』
通称『金フレ』『銀フレ』。
TOEICに特化した単語帳です。
さまざまな人が推薦しているし、書店でも山積みになっているので人気があるのでしょう。
ちょっと寄り道!
『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』
「TOEIC500点以上」の読者を想定した本。
通称『金フレ』。
まず短文(日本語文の下に英語文)があります。
英文中、覚えるべき単語が頭文字だけ書いてあり、空欄部を読者に考えさせるように作られています。
答はすぐ右にページにあり、少し考えてから正解を見ることで、定着率は上がりそうです。
例文も実用性のありそうなものばかり。
人気があるのも納得。
『TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ』
通称『銀フレ』は『金フレ』より後に発刊されました。
2012年の発売以来、・・・「金フレ」の通称で多くの読者の支持を得て、累計70万部を超えるベストセラーとなりました。本書は「初級者向けの金フレが欲しい」という読者の声に応えたベーシック版です。(「はじめに」より)
対象読者は以下の通り。
『金フレ』のヒットを受けた二番煎じ
『金フレ』が売れたので柳の下のドジョウを狙ったような本。
収録単語がかなり『金フレ』と重複しています。
そんなことを知らずに両方を買ってしまって損をした気分です。
『黒のフレーズ』『暗黒のフレーズ』という、『金フレ』の上を行く語彙を集めた続編も購入を検討していましたが、『金フレ』『銀フレ』の重複ぶりを見て、購入意欲がそがれました。
TOEICトリビアがおもしろい
『金フレ』『銀フレ』の解説部にはTOEICトリビアがあり、なかなかにおもしろい。
以下、( )内の単語の項目に書かれていたコメントです。
(paid) TOEICの世界にはブラック企業は存在せず、福利厚生がしっかりした会社ばかり。
(scholarship) TOEICの世界では、奨学金の返済で苦しむ人は存在しない。
(crowded) TOEICに登場するお店は世界不況でも常に商売繁盛。売上不振に苦悩する店主は登場しない。
(ingredient) TOEICの世界では、ワインやビールといったアルコール飲料は存在せず、住人はソフトドリンクしか飲まない。
(prosperous) TOEICの世界にはゴーストタウンのように朽ち果てた町は存在せず、どの町も栄えている。
(officer)TOEICの世界には軍隊は存在しないので、「将校」の意味では出ないが、「警察官」の意味ではたまに出る。
TOEIC対策にはいいが・・・
この解説部、おもしろいのですが、同時に疑問もわいてきます。
「TOEICに出る単語だけを、フレーズで効率的に覚えられる」というのが『金フレ』『銀フレ』の基本コンセプトなので、その意味では目的にかなった書籍です。
TOEICの得点を上げたい人にはいい単語集かもしれません。
しかし、上記のようにTOEICそのものが、そうとう偏った世界であることを考えると、ふつうの英語を理解するためのボキャビル教材としては不適切ないし不十分であると思います。
Z会『速読速聴・英単語』
昔はCoreとAdvancedしかなかったのに、今ではシリーズ化され、
- Basic 2400
- daily 1500
- Core 1900
- Opinion 1100
- Advanced 1100
- Business 1200
ずいぶん増えましたね。
版を重ねるロングセラー。
それなりに評価されているということでしょう。
こちらはアルクの本を知る以前に持っていました(Core, Advanced)。
当時は読みかけて挫折しました。
というか、一通りは読みましたが、覚えたかと言われると……。
長文のなかに単語を入れ込んでいるところがメリットでもありデメリットでもあるという本です。
まとまった文章の中に単語が出てくるので、長めの文章を読むのが苦痛な人はそれを見ただけで、気分が重くなるでしょう(Core, Daily, Advanced, Business)。
また、スキマ時間にチョコチョコと覚えたい人には不向きかもしれません。
『究極の英単語』の項でも書きましたが、例文中に学習単語が詰め込まれているので(Core)、ある程度知っている人はいいけれど、わからない単語ばかりという人にとってはボキャビルにならない可能性があります。
文章の中で単語を覚えるというのは、基本的に王道だと思うので、肌があえば、よい単語集でしょう。
ボキャビルと同時に長文対策にもなります。
ただ、個人的には単語学習はサクサク「英単語→日本語訳→例文」が、やりやすい。
長文対策なら、読みたい本を読みますね。
アイシービー『Duo3.0』
『Duo3.0』は自分が使っていないことを、まず、お断りしておきます。
英語のできる知り合いが推していたので、ちょっと覗いてみました。
例文が自然で、使える文であることを売りにしています。
たしかに、そうかもしれませんが、最初から、いきなり
we must respect the will of the individual.
初級者には敷居が高いかも。
また、目次を見たところ、いわゆる上級語彙はないので、すでにボキャブラリー豊富な人には物足りないでしょう。
ただし、ボキャブラリーがあっても話せないのが日本人なので、スピーキングなど産出の苦手な中級者には、あっているかも。
まとめ
英単語の書籍として、以下を紹介してきました。
- アルク『POWER WORDS』ないし『究極の英単語』12000語を網羅。長期的視点に立ったボキャビルに最適。
- アルク『究極の英単語プレミアム』上級語彙だけを集めたマニアックな単語集
- Z会『速読速聴・英単語』単語・長文の一石二鳥を狙う人向け。
- 朝日新聞出版『金フレ』『銀フレ』TOEIC対策に特化。
- アイシービー『DUO 3.0』使える例文で基本語彙をマスター。
個人的なイチオシ教材は1万語面倒をみてくれて、現在も入手可能なアルクの単語集『究極の英単語』です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。