去年から今年にかけて、ちょっとまじめに英語を勉強中。
全く知らない外国語ではないし、ドイツ語と似た言語なので、勉強しやすいけれど、似て非なるものもまたやっかい。
それにしても英語の学習インフラは整っていていいですね。
教材はよりどりみどり。
でもないよりマシです。
発音指導に疑問
YouTubeでも英語系の配信者がわんさかいますね。
いろいろな人が、様々なレベルの動画を出してくれていて、大変、参考になります。
みなさん、大半は正論だとは思いますが、ちょっと疑問に思ったのが、発音指導。
「ネイティブスピーカーはこう発音するよ」まではよいとして、だからといって私たちが、そう発音しなければならないものなのでしょうか。
ネイティブ英語もいろいろ、各国英語もいろいろ
ひとくちに英語と言ってもいろいろな英語があり「ネイティブ英語」にもかなりバラつきがあります。
また、英語は英語圏だけで話されている言語ではなく、世界共通語として世界中で話されています。
話す人もさまざまで、それぞれのお国なまり丸だしでしゃべってくる人も多数。
英語の実力も人それぞれです。
日本人には稀なケースですが、諸外国にはけっこういますよね。
「正しく」発音すると通じないこともある
もし、英語圏に行って英語ネイティブばかりを相手に会話する生活するのなら、現地になじんだ発音をしたほうがいいでしょう。
その土地の英語を話したほうが相手は理解しやすくコミュニケーションがスムーズに進むでしょう。
しかし、日本にいながらにして英語を話す状況では相手がネイティブスピーカーとは限りません。
ワウワウと吠えるような曖昧な(?)英語の発音がわかりにくいと思うのは日本人だけではありません。
「正しく」発音した結果、通じないということも実際にありうるのです。
「文学」はリテラトゥー
ある日本語学校で日本語を教えていたとき、あるクラスは生徒の半分が英語圏、半分がスペイン語圏の若者たちでした。
あるとき「文学」という言葉が出てきて、生徒の誰も理解できませんでした。
教室ではなるべく日本語だけで授業を進めるのですが、これはちょっと困りました。
「本」なら、教科書などを持って「これは本です」などと言えるのですが、「文学」では絵にも描けない。
しかたがないのでliteratureと言いました。
すると英語圏は「A-ha!」とわかってくれたのですが、スペイン語圏が「???」。
一か八か「リテラトゥー」と言ってみました。
すると、スペイン語圏も「A-ha!」。
実はドイツ語が「リテラトゥーア」でして、おそらくスペイン語も似たようなものだろうと思って語尾をごまかして言ってみたら、案の定、理解されました。
単語の大部分が似ていても語尾だけは各国語で異なることが多いためです。
あとで調べたところ、スペイン語では「リテラトゥーラ」でした。
強勢が「トゥー」にあるところも同じです。
literatureを文字通りに読んだら「リテラトゥレ」ですが、英語では「リタラチャー」のような発音で、しかも語頭にアクセントがあるので、大陸ヨーロッパの「文学」とは大きく異なって聞こえます。
英語は異常
文字はふつう読める
こと発音に関して、英語は異常です。
英語の発音の難しさは発音そのものの難しさに加えて、つづりと発音が一致しないことにあります。
いちおう英語もヨーロッパの言語の仲間ですが、ヨーロッパの言語でこんなにつづりと発音が一致しない言語はほかにないでしょう。
独仏西伊露などの大言語をはじめ、たいていルールさえ覚えれば読めます。
読める……と聞いています。
英語の文字はナマケモノ:表音しない表音文字
大陸ヨーロッパと島国イギリスの間には言語的にも深い溝があるようです。
その異常な英語が世界の共通語になってしまったものだから、私たち非ネイティブは大変な思いをしているわけです。
アルファベットとは表音文字のはずですが、英語のアルファベットは音を表さない!
なんとなく発音のヒントを表示しているといったところでしょうか。
知っているものは読めますが、知らない単語は発音記号を確認しないと、自信をもって読むことができない!
日本人の英語を考える
Literatureをリタラチャーと発音する英語がどうかしているのですが、そこを攻めてもしかたがありません。
問題は私たちもそう発音しなければならないのか、という点です。
Literatureに関しては、「世界共通語」としての英語を考えるならば、文字通り発音に近づけたほうが通じるとも言えるわけです。
いちおう英語の範囲内にはとどめるとして「リテラチュア」ぐらいでしょうか。
相手がヨーロッパ人なら、たいへんに有効ですし、そうでなくても、ふつう外国語は文字で覚えますから、ヨーロッパ人以外の非ネイティブにとっても文字に近い発音のほうがわかりやすいものです。
もっとも、この方法が通用するのはラテン系の長めの単語です。
ゲルマン系の短い単語、例えば「take」や「make」を「ターケ」、「マーケ」と言って通じやすくなるかどうかは大いに疑問です。
ネイティブのように発音することはあきらめよう!
日本では英語教材の音声の吹き込みは北米の英語です。
私の学齢期にはほとんどすべてがそうでしたし、いまも圧倒的に英語=米語であるように思われます。
アメリカは日本の重要なパートナーであり、留学・ビジネス・観光ほかアメリカに行く人が多いでしょうから、日本人が学ぶ際のお手本として、まずアメリカ英語が提示されることは順当であると思います。
しかし、日本人の英語が、アメリカ式であるべきかどうかは別問題です。
日本人英語学習者に多い「第三の音」
ある外国人が「インド人はインドなまり、中国人には中国なまりがあるけど、慣れればわかる。でも日本人の英語には慣れることができない」と言っていました。
日本人にありがちな問題のうち致命的なのは、日本語の音を避けようとする傾向です。
本物に近づけようと努力するのはいい。
しかし、前述のように英語にはいろいろな問題があって、「正しく」発音するのが異常に難しいのです。
ここははっきり言いましょう。
英語の先生になるのでもなければ、「ネイティブのように発音する」はあきらめたほうがいいと思います。
現地に行って、毎日毎日、英語だけで生活するなら、そのうち英語を話す筋肉が鍛えられると思いますが、日本にいて、普段日本語を使って生活しながら、まったく異なる英語を「ネイティブのように」話すのは無理だと思います。
そこを「ネイティブっぽく」発音しようとして変になっている人がものすごく多くないですか?
正しい発音がわかっていて、そこに近づけようと努力するのはいいです。
しかし、正しい発音がわかっていないのに、曖昧な音のイメージだけが先行して、テキトーに発音しても英語にはなりません。
変な音のずらしかたをして英語でも日本語でもなんでもない「第三の音」になっているケースがあまりにも多い。
日本語の音でなくしさえすれば英語になると思っているかのように感じられます。
日本語なまりの英語なら、少なくとも日本人には通じます。
日本人の話し方に慣れた外国人も、わかってくれるかもしれない。
しかし、「第三の音」では誰にもわからない英語になってしまいます。
「第三の音」現象を起こすのは英語学習者だけ
ところで、英語以外の言語の学習者には、日本語なまりはあっても、「第三の音」現象はありません。
絶対にないとは言い切れませんが、私の知る限りない。
かつて自分がドイツ語ほかを学習していたときのクラスメート、また現在ドイツ語を教えている生徒を見ても、日本語なまりはあっても、「第三の音」を出す人はいません。
うまく発音できない、という場合はありますが、少なくとも目標の音に近づいていて、とんでもない方向には行っていません。
たぶん、つづりと発音の不一致が引き起こす珍現象でしょう。
通じるカタカナ、通じないカタカナ
カタカナ英語はおおむね通じる
「カタカナ英語では通じない」とよく言われます。
しかし実は、ほとんどの場合、カタカナ英語で十分に通じます。
むしろ下手に「英語っぽく」しないほうがはっきりしてわかりやすい英語となります。
たとえば、ネット配信動画から大人気となった成田悠輔氏の英語を聞いてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=tLbFVeYVpnU
ぜんぜんネイティブっぽくないですが、はっきりしていて聞きやすいのではないでしょうか。
イェール大学に招かれ、そこで講義されているということですから、アメリカの学生にとってもわかる英語に違いありません。
それはしょうがない。
英語学習アプリでもカタカナ発音でOK!
「第三の音」よりカタカナ
私の母は脳トレの一貫として外国語学習アプリ「デリュオリンゴ」の英語をはじめました。
デリュオリンゴには、スピーキング(音読)課題があるのですが、「第三の音」ではなかなか正解となりません。
母も「第三の音」を発声していたので、「カタカナで発音してみて!」とアドバイスし、実際にカタカナ風に発音したら、正解認定されました。
カタカナ発音のほうが正答率があがる
デリュオリンゴがのスピーキング問題に関してはいろいろと実験しておりますので、興味ある方はこちらを参照してください。
ここでは「第三の音」より「カタカナ英語」のほうがはるかに正解と認識されやすいとだけ言っておきます。
ない母音を発音してはいけない
カタカナ英語が通じないのは、ある特定の場合だけです。
そのうち最悪なのは、ない母音を発音すること。
「This is a pen」をふつうに(?)カタカナにすると、「ディス・イズ・ア・ペン」でしょう。
このうち本来母音のついていない音「ス」「ズ」「ン」を強調して(伸ばして)「ディスゥ・イズゥ・アー・ペンー」のような言い方をしたら通じません。
よーく聞くと、語尾の子音は次の単語の母音とくっついて「ディスィザ・ペン」のようになってます。
これもカタカナですが、これなら通じる!
日本語の音そのものに問題はあまりないのです。
ない音を入れるなど致命的なことをせず、そこそこのカタカナを言っておけば、かなり通じます。
それについては後述します。
日本語の音は格好悪い?
日本語でも英語でもない「第三の音」になってしまう人は変な固定観点を持っているのかもしれません。
日本語の音が「格好悪い」とか、「聞き手が不快に思う」と考えているのではないでしょうか。
これに関しては朗報です。
日本語なまり、実はカッコイイ
「日本語なまり」はカッコイイ!
次のYou Tube動画が参考になります。
【Kevin’s English Room英語の発音がカッコイイ国ランキング!日本は意外と上位なの!?】
(Kevin’s English Roomさんが参考にした元記事はこちら。)
「英語の発音がカッコイイ国ランキング」で、日本語アクセントはなんと堂々の第11位!
ベスト10はイギリス、アメリカ、オーストラリアなどのネイティブ英語がほとんどを占め、純粋に外国なまりと言えるのは5位フランス、6位ドイツ、10位インドだけ。
11位日本は実質上の4位です。
この調査は32カ国で行われているので、英語圏だけでなく多くの国で日本語アクセントはポジティブに評価されていると見ていいでしょう。
カタカナでいいけど工夫は必要
つまり、日本語の音はカッコイイのです!
だったらますます日本語の音を活用しない手はない。
コントロールできる音を使う
「第三の音」の問題点は、コントロールがきかないことです。
ネイティブ英語の発音ができている(近づいている)人は練習を重ねて英語用の筋肉を鍛えている人です。
一方、「第三の音」になっている人は、おそらく「英語の発音はちゃんとできないけど日本語の音では恥ずかしい」という人。
「この音を出す」と狙って(自信を持って)出している音ではないので個々の発音がピタッと決まらない。
そんなわけのわからない音を出すぐらいなら、自分がしっかりコントロールできる日本語の音にとどまったほうがいい。
問題はどこでどんな音を出すかです。
英語は文字が当てになりませんので、ラテン語源以外の単語は文字をそのままカタカナで読むと、通じない英語になることが多々あります。
「ディス・イズ・ア・ペン」→「ディスィザ・ペン」程度の変換は必要となります。
聞こえた通りにカタカナで書き取って、それを読むなどしてみてはいかがでしょうか?
それが、けっこう大丈夫。次節を読んで下さい。
目よりも耳を信じよう ー I’m happyは「あまーぴー」
あるときツイッターでおもしろい情報が流れてきました。
全く英語ができない小学生に「この英語なんて聞こえる?」ってインタビューした結果をまとめてみたよ。先入観が入ってしまった大人には絶対にこうは聞こえない。子どもの耳って本当にすごいよね。 pic.twitter.com/Cs8ZzizfnM
— こあたん🇦🇺こあらの学校 (@KoalaEnglish180) July 19, 2022
とても参考になります。
あなたの目ではなく耳を信じましょう。
子どものような純真な気持ちで英語を聞いたら、精度を増した「通じるカタカナ英語」が開発できる……かも。
聞き方、読み方がいい加減だと、ネイティブっぽく発音したつもりでも、本物に近づくどころか、むしろ離れていきます。
ちゃんと聞いて、ちゃんとしたカタカナ(?)で再現すれば、逆説的なようですが、そのほうがよっぽど英語に近づきます。
世界共通語としての英語、日本バージョンがあってもいい!
インド人はインドなまりの、中国人は中国なまりの、そして日本人は日本なまりの英語を話すのは当然だと思います。
「ネイティブに通じない」では困りますが、ネイティブ、非ネイティブを問わず、意志の疎通ができることが重要なのであって、どれが「正」なのかわからない英語の発音の「正確さ」は二の次です。
「ネイティブのように」発音できるようになる方は、それはそれで努力のたまもの。立派なことですが、日本人が日本で話す英語は日本人にわかりやすい英語であることが望ましいと思います。
せめて日本人の発言を聞く際には日本人がアドバンテージをとりたいものですよね。
英語っぽさ(たいてい思い込み)より、実際的なコミュニケーションを優先したい。
その意味で「世界共通語としてのジャパニーズ・イングリッシュ」があってもいいと思うのですが、いかが?
- ネイティブのように発音しなくていい(通じればいい)。
- ラテン語源の単語は文字通り読んだほうが通じる場合もある。
- 日本語の音はカッコイイ。自信を持ってカタカナ英語で話そう。ただし、どんなカナにするかは工夫が必要。
- 世界共通語としてのジャパニーズ・イングリッシュを目指そう!
最後まで読んでくださってありがとうございました。