つれづれエッセイ

ご先祖さまは源頼光(2)祖父の思い出 近衛隊時代の話

多田神社

ご先祖さまは源頼光(1)」でご先祖さまの話をしましたが、親戚一同、一介の庶民なので、古いご先祖さまのことは、かなり大きくなるまで知りませんでした。

多田神社
ご先祖さまは源頼光(1)海上知明『「義経」愚将論 源平合戦に見る失敗の本質』を読みながら、ご先祖さまについて考えてみたご先祖さまってどんな人? 中世史に詳しい海上知明先生の『「義経」愚将論』を紹介しながら、多田源氏について語ります。 ブログまぐのりあへようこそ!...

ご先祖さまを理解するまで

小学校低学年の頃にちょっとした珍事件がありました。

「天皇陛下からいただいた」で祖母のボケを疑う

母の実家に遊びに行ったとき、「おじいちゃんの宝物」を祖母が見せてくれたのです。

祖母 天皇陛下からいただいたんやで~。
私 はあ?

ご先祖さまはわからなくても「天皇陛下」は子どもでもわかります。
そんなこと、あるわけがない!

私 (なんでおじいちゃんが天皇陛下からモノをもらうわけ? 子どもだと思ってバカにしてんの?)

祖母はいたってマジメな顔をしているので、だんだん心配になりました。

私 (ボケちゃったのかな?)

悲しいというか、寂しいというか。
どうしていいかわからなくて、パニックに陥りました!

私は幼かったですが、そのときの混乱はいまでもはっきり覚えています。
その分「おじいちゃんの宝物」が何だったのか、ぜんぜん覚えていません。

射撃大会のご褒美

その後も祖母は頭脳明晰、ちっともボケてなどいない。

「天皇陛下にいただいた」は私の頭の隅に残ったまま、時は過ぎてゆきました。

だいぶ大きくなってから、改めて母に聞きました。

私 あれはいったい何だったの?
母 おじいちゃんは近衛隊にいたことがあってね。そこで射撃大会があって、おじいちゃん、上手だったから、ご褒美をいただいたみたい。

それを聞いてほっとすると同時に、なにやらがっかり。

「天皇陛下にいただいた」と言うから、もし事実なら、個人的な知己を得て、思い出のお品をいただいたようなイメージでした。

のりあちゃん
のりあちゃん
紛らわしい言い方だね!

まったくです。

近衛隊は天皇および皇居をお守りする部隊です。所属期間中の射撃大会で優秀な成績をおさめたご褒美なら、まあ納得です。

祖父母としては「天皇陛下にいただいた」には違いないと思いますが、当の大会を天皇陛下がご覧になったかどうかもよくわからないし、天皇陛下のお名前で何かいただいたにしても、直接いただいたわけではないでしょう。

それとも、直接いただいたのかな? 謎。

近衛隊の入隊条件は ①よい家柄 ②品行方正 ③容姿端麗

ところで「近衛隊」に入るには、家柄がよく、品行方正で、容姿端麗でなければならなかったとか。

祖父は私が物心ついたときには、すでに「おじいちゃん」だったので、「容姿端麗」と言われてもピンとこないのですが、母いわく美男だったらしいので、その言葉を信じましょう。

「品行方正」は間違いありません。堅物で融通がきかないけれども、公正でまっすぐな気性。家族だけでなく、友人・知人からも信頼を得ていました。

問題は「家柄」です。そんなにいいの?

そこで実はご先祖さまは清和源氏なのだという話をはじめて母から聞いたのでした。

当時は源満仲も頼光も知らなかったんですが、いちおう調べてみると、日本史の教科書にも出ていて「おおっ!」。

タダでもらえるおまんじゅう?

ご先祖さまの話は、母自身も子どもの頃はよくわからなかったらしい。

清和源氏の基礎を固めたと言われる源満仲とその嫡子、頼光。

「満仲」は「みつなか」、「頼光」は「よりみつ」と読むのがふつうですが、それぞれ「まんじゅう」「らいこう」とも呼ばれます。

本拠地は多田荘なので源満仲のことを「多田の満仲(ただのまんじゅう)」と母の育った家では呼んでいたそうです。

子どもだった母はいつも「タダでもらえるおまんじゅうって何だろう?」と思っていたそうです。

まんじゅう

祖父の近衛隊時代の話

祖父が近衛隊にいたのなら、いろいろなおもしろエピソードがあるだろうと母に聞いてみましたが、祖父は近衛隊時代の話を家族にあまり語らなかったそうです。

今となっては祖父はもういません。生前にいろいろ聞いておけばよかった。

それでもわずかに伝わっている話がいくつかあります。

トイレは水筒

1926(大正15)年12月末、大正天皇が崩御されました。翌年2月に大喪儀が行われます。

そのときに祖父は警備についたらしいのですが、寒いなか、仕事中はトイレに行けません。

どうしたかというと水筒におしっこをしたそうです。

 

でもここで疑問がひとつ湧いてきました。

祖母の「天皇陛下からいただいた」の「天皇」とはどっちの天皇だったのだろう?

大正天皇? 昭和天皇?

これは想像するしかないのですが、たぶん昭和天皇。

もし大正天皇なら「大正天皇」と言ったと思います。

「天皇陛下」と言ったので、会話当時の今上陛下、昭和天皇のことでしょう。

後ろを向いていてください

もうひとつのエピソードは天皇陛下の予定外の外出です。

天皇陛下がときどきお忍びで外にお出かけになることがあったそうです。そんなときは「後ろを向いていてください」と言われたそうです。

のりあちゃん
のりあちゃん
後ろを向かなくてもいいんじゃない?

「見なかったことにしてください」という意味でしょうが、なんとも微笑ましい。

コーヒーとチーズ

祖父は明治生まれの人にしては珍しく、毎日チーズを食べ、コーヒーを飲む習慣がありました。ひょっとしたら近衛隊時代のハイソな仲間たちからの影響かもしれないと思ったりしています。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

多田神社
ご先祖さまは源頼光(3)現代的には理解不能な旧家エピソードいろいろとある清和源氏の家の不思議なエピソード。 時代くだればすっかり庶民ですが、それでも昭和初期までは、伝統やしきたりが残っていたようです。 ブログまぐのりあへようこそ! ...