今回は石けん系のフローラルフレグランスを紹介します。
そう。石けん自体はもともと良い香りがするわけではなくフローラル系の香料のなせるわざ。
ただ、どんなフローラル香水でも石けんのような匂いがするかというとそうでもありません。
イメージとして「石けんの匂い」があるのは事実で、「なんとかソープ」など石けん系を売りにした名前がついている香りもあります。
「石けん系」フレグランスは清潔好きの日本人には好まれます。
また、香水をつけていると思われずに使えるというメリットがあります。
ところで、香りのイメージとしては、さっぱりとして爽やかな石けん系のフレグランス、意外と重厚だったりすることもあります。
ニナ・リッチのレールデュタンのように。
創業者マリア・ニナ・リッチと息子ロベール
ブランド「ニナ・リッチ」の創業者マリア・ニナ・リッチ(1883~1970)はイタリア出身。
マリア・アデライデ・ニエリとしてトリノに生まれ、子どもの頃からの愛称がニナ。そして、最初の夫がフィレンツェの宝石商の息子ルイジ・リッチ。
マリアは10代で、パリのモンマルトルで裁縫材料店を営んでいた姉を頼りフランスへ出てきました。最初はお針子の一人として働き始めましたが、メキメキと頭角をあらわし、モデリスト(デザイナーの指示に従って制作する人)、そしてデザイナーへと猛出世します。
マリアとルイジの間には息子ロベールが生まれ、母子で育てたブランドが「ニナ・リッチ(Nina Ricci)」です。
夫婦仲はうまくいかなかったようで離婚しました。
1932年、ニナが自らのメゾンを創業し、46年にロベールが香水部門に進出します。
時代の気分をあらわす香りレールデュタン
レールデュタンは、1948年という第二次世界大戦後まもない時期にL’air du temps(時代の気分)を表す香りとして登場しました。
このレールデュタンは、時代を超えて売れ続け、世界のどこかで5秒に1個の割合で売れているのだとか。
いつの時点の話かわかりませんが、要するにロングセラーの売れ筋フレグランスということです。
イギリスの故ダイアナ妃やスペインのソフィア妃(前国王フアン・カルロス1世の妃)ご愛用の香りだったそうです。
たしかに華やかなダイアナ妃のイメージにぴったりです。
レールデュタン(L’Air du Temps)の香り
トップ | カーネーション、アルデヒド、ローズ、ネロリ、ローズウッド、ピーチ、ベルガモット |
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ミドル | ガーデニア、ジャスミン、スミレ、ローズ、イランイラン、オリスルート、ローズマリー、オーキッド、クローブ |
ベース | ブラックペパー、アイリス、オークモス、ムスク、サンダルウッド、ベンゾイン、アンバー、ヴェチバー、シダー |
さっぱりした石けんの香り。でも、ただの石鹸ではない。優しい甘さが漂い、微妙にスパイスやウッドが効いていてひきしまります。
矛盾した香りが矛盾を感じさせずに同居している。
ロベール・リッチは「繊細で若々しくロマンティックで官能的なレールデュタンは、トップノートからベースノートにいたるまで一貫して均整の取れた、生き生きした香りだ。不思議な魅力を放っている」と言ったそうですが、たしかに。
「均整の取れた」香りというのは納得です。
参考文献『フランス香水伝説物語』
アンヌ・ダヴィス/ベルトラン・メヤ=スタブレ『フランス香水伝説物語』原書房
ニナ・リッチやレールデュタンの歴史については本書を参考にしました。
似た香り:キャシャレル、アナイスアナイス(Cacharel, AnaïsAnaïs)
キャシャレルのアナイスアナイスもレールデュタン同様に濃い~めの石けん系フローラルフレグランス。
「石けん」要素はレールデュタンより強く、持続力もあります。
レールデュタンが石けん以外の香りも含むのに対して、アナイスアナイスは徹頭徹尾、高級石けんの香りです。フローラル系が強く出て、ベースの香調はあまり感じられません。
トップ | ヒヤシンス、ハニーサックル |
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ミドル | ユリ、スズラン、ジャスミン、イランイラン、ローズ |
ベース | ベチバー、ムスク、サンダルウッド、ブラックカラント |
1978年に誕生したフレグランスですが、まったく古さを感じさせません。
石鹸系は永遠です!
レールデュタンとアナイスアナイス、ともにイベントやパーティなど華やかな場所へのお出かけ向けの明るい香り。季節を問わず使えます。
なお、
「香りをまといたいけれど、すぐに飽きてしまう」
「ボトルを使い切らない」
「香水は、まず試してみないと……」
という方には、カラリア 香りの定期便をお勧めいたします。
お好みのフレグランスを選んで少量だけ送ってもらうことができます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
少しでも香り選びの参考になれば幸いです。