ドイツ映画『Uボート』をご存知でしょうか。
日本公開は1982年、今年でちょうど40年になります。
今回はドイツ映画の金字塔『Uボート』について、つらつらと語ります。
アカデミー賞6部門にノミネート
アメリカでも1982年に公開され、アカデミー賞で6部門にノミネートされました。
監督、撮影、視覚・音響効果、編集、音響、脚色。
……それでもすごい!
ちなみに1983年の日本アカデミー賞外国作品賞にノミネートされていますが、惜しくも『E.T.』に敗れています。
Uボートとは?
ドイツの潜水艦
「Uボート」とは一般的に第一次~第二次世界大戦期のドイツの潜水艦のことです。
当時のドイツの潜水艦の活躍は目覚ましく、世界にその名を轟かせました。
ドイツ語ではドイツの潜水艦だけを指すわけではない
Unterseeboot(潜水艦)の省略形で、ドイツ語としては特にドイツの潜水艦だけを指す言葉ではありません。
原作のタイトルに「U」はない
また映画(および原作小説)のドイツ語タイトルは「Das Boot」。
Uの字はありません。
ちなみに欧米でもドイツ語のまま「Das Boot」か各国語訳となっており、「U」はついていません。
監督も出演者も一挙にブレイク!
監督のヴォルフガング・ペーターセンはその後ハリウッドに進出!
それまで無名だった俳優たちも、『Uボート』を期にビッグになりました。
といっても日本人が聞いてピンとくる名前はあまりないような気がします。
しいていえば艦長役のユルゲン・プロホノフは後に『ダ・ヴィンチ・コード』でアンドレ・ヴェルネ役を演じています。ヴェルネはチューリヒ信託銀行の夜間支配人で、最初ラングドンとソフィーを、警察の追跡から逃がしてくれましたが、最後はソフィーたちを銃で脅して荷物を渡すよう要求します。
そんな役でした。
また記者役のヘルベルト・グレーネマイヤーは歌手として成功しています。
ドイツ語で歌っているので世界的な知名度はイマイチですが、ドイツでは知らぬ者のないスーパースターです。
内容について
あらすじ
第2次世界大戦中、1941年の秋、敵国イギリスの補給路を断つためにドイツは大西洋にUボート艦隊を出撃させた。
そのうちの1隻U96は、43名の乗組員を乗せて、フランスのラ・ロシェル港を出港。
狭い潜水艦の中で単調な毎日が続く。
しかし、敵と遭遇すると、たちまち艦内に緊張が走る。
死と隣り合わせの恐怖の連続。
乗組員たちの運命やいかに!
緩急のきいた演出で緊張感が高まります。
話は潜水艦の艦長と報道部記者ヴェルナー少尉を中心に展開。
ヴェルナーは、潜水艦戦の実態を取材するためにU96に乗り込んだのですが、思った以上に過酷な潜水艦の現場に恐怖します。
その他、トリビア
ソフト版の吹き替えでヴェルナー役は池田秀一さん(『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブル役)です。
原作者は実際に潜水艦勤務経験者で描写がリアル。映画でも、艦内が見事に再現されているそうです。(私は潜水艦に載ったことがないので判断できませんが)
潜水艦の戦いは過酷であったようで、1945年に戦争が終わった時、ドイツ軍潜水艦乗組員4万人のうち3万人が戻ってこなかったと言われます。
3つの『Uボート』
映画はテレビドラマの凝縮
映画として世界的に大ヒットした『Uボート』ですが、もともとはTVシリーズとして企画されたものでした。しかし、短く凝縮された映画版が先に発表されます。
ドイツ公開は日本やアメリカより1年早く1981年でした。
テレビシリーズが後追い
数年後、本来の企画どおりテレビでも放映され、テレビ版では映画にはないシーンがたくさん入っています!
ディレクターズカット
今日普及している「映画版」は1997年に再編集された「ディレクターズカット」で、オリジナルの映画版にTV版からいくつかのシーンが付け加えられ、音質・画質を改善されています。
監督いわく「本来、映画もこの形で公開したかったが商業的な理由でできなかった」のだそうです。
戦争賛美と批判された!?
10年ほど前のこと、ドイツで『Das Boot』に関する展示を見に行きました。
そこでびっくりしたことがひとつ。
映画公開当初「戦争賛美であ~る」のような批判があったというのです。
過酷さ、むなしさを描いていると思うのですが……。
調子のいい音楽のせい?
しいて「戦争賛美」的な要素があるとすれば、クラウス・ドルディンガーによる音楽でしょうか。
登場人物たちが危機を切り抜ける(切り抜けた)シーンでは勇壮な音楽が流れます。
でも、映画音楽を作ってくれと頼まれたら、作曲家はドラマチックで雄大な曲をつくりますよね。
ちなみに作曲家ドルディンガーさん、『ネバー・エンディング・ストーリー』(関連記事はこちら)の音楽も担当しています。
人物描写がリアルすぎた?
もうひとつ考えられるのは、人物描写がリアルだったことです。
ナチス政権下の第二次大戦中を舞台にした映画では、悪いナチスの幹部や親衛隊が、一般人(反ナチスのヒーロー・ヒロイン)を弾圧・迫害するシーンが出てくるのがお決まりのパターン。
対して『Uボート』では、ほとんどの人が反ナチスでも親ナチスでもないふつうの人。ステレオタイプな描き方でなく、自然でリアル。どこにでもいそうな若者やおじさんたち。
極限状況における人間の弱さ、強さを描いた傑作だと思いますが、ナチス時代のドイツを「ふつう」に描いたことが批判の対象になったのかもしれません。
約40年後に続編
年月を経ても色褪せない感動がある『Uボート』には続編がつくられました。
2018年、『Uボート ザ・シリーズ 深海の狼』(全8話)
2020年、『Uボート ザ・シリーズ2 深海の狼』(全8話)
永遠の『Uボート』ですね!
日本に向かった『ザ・ラストUボート』
続編ではありませんが、日本人俳優も出演していたUボート作品があります。
日独墺米、国際共同制作ドラマ
国際共同制作ドラマ『ザ・ラストUボート』。
1993年に正月番組としてNHKで放映されました。
ドイツ、オーストリア、日本、アメリカの共同制作ドラマです。
小林薫さんが日本人将校役として出演していました。
終戦の直前、ドイツから日本へ極秘の輸送作戦
まもなく終戦という1945年4月に秘密指令で日本に向かうドイツ潜水艦があった。
その中には帝国海軍中佐が二人。
彼らは核兵器関連物資を日本へ輸送しようとしていた。
しかしドイツは日本より数ヶ月早く5月初旬に降伏してしまう。
本国で戦争が終結し、任務途上のドイツ人たちは困惑。
作戦継続派と中止派に分かれて激論が交わされる。
目的は達成されるのか?
ドラマは戦争末期に実際に行われた任務をもとに描かれているのだとか。
派手さはありませんが、印象に残っています。
日本に向かったUボートもご覧になってみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでくださってありがとうございました。