ドイツは連邦“共和国”ですから、王様はいません。
しかし、なぜか王子さまはいるのです。
世が世ならプロイセン王・ドイツ皇帝
写真はゲオルク・フリードリヒ・プリンツ・フォン・プロイセン、ホーエンツォレルン家長です。
ゲオルク・フリードリヒは最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の孫の孫。
名前を訳す(?)と「プロイセンの王子ゲオルク・フリードリヒ」です。
もっとも、「プリンツ」は「王子」のほか「公」と訳される場合もあります。
現在王制ではないので、公的な意味はありませんが、ホーエンツォレルン家に限らず、「プリンツ」は元王族の子孫の「名前の一部」となっていることが多いです。
また、ドイツでは「公爵」や「伯爵」のようなタイトルも見かけます。
ちなみに、これら貴族の称号は、隣国オーストリアでは禁止されています。
ヴィルヘルム2世に似ているかも
ゲオルク・フリードリヒ(1976~)、2022年現在46歳と比較的若い当主です。
最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世を、かわいくしたような感じのお顔。
ヴィルヘルム2世からすると4代目の子孫ですが、超隔世遺伝しています。
2011年にゾフィー・フォン・イーゼンブルクと結婚し、これまで三男一女をもうけています。
ホーエンツォレルン家の厳しい家法
同格の家の娘と結婚しないと廃嫡
ところで、ゲオルク・フリードリヒの父も祖父も長男ではありません。
基本的には長子優先ですが、ホーエンツォレルン家の家法によると、同格の家の娘と結婚しないと相続権がなくなるそうです。
ちなみに、祖父ルイ・フェルディナントも、アメリカ滞在中ハリウッド女優に熱を上げていました。
しかし、兄が「同格の結婚」をしなかったので廃嫡になってしまい、義務感と責任感から(?)、ドイツに戻ってきて、キラ・キリロヴナ・ロマノヴァと結婚します。
「ロマノヴァ」ですから、ロマノフ家の娘です。
祖父から孫への家督継承
そして、ルイ・フェルディナントの長男・次男が「同格の結婚」をしなかったので、同名の三男ルイ・フェルディナントjr(ゲオルク・フリードリヒの父)が家督継承者と定められました。
しかし、ルイ・フェルディナントjrは1977年に事故死してしまいます。
そのため、祖父ルイ・フェルディナントが1994年に亡くなると、祖父から孫への継承となり、17歳のゲオルク・フリードリヒが家督を継ぐこととなりました。
ここで問題が起こりました。
祖父の死後、廃嫡の伯父フリードリヒ・ヴィルヘルムが、「家法は憲法違反である、自分にも相続権がある」と主張し裁判所に訴えたのです。
憲法裁判所の判決はといえば「たしかに憲法違反である。しかし、遺言によって相続人を決める権利はある」として、結局のところ、家督に関しては現状維持です。
厳しい結婚ルールはヴィルヘルム2世が言っただけ
ところで、ゲオルク・フリードリヒの廃嫡の伯父フリードリヒ・ヴィルヘルムによれば、「同格」とは厳密にはヨーロッパ王侯トップ42家のことだそうです。
その基準では、ゲオルク・フリードリヒもその父ルイ・フェルディナントjrも、「同格」の娘と結婚してはいません。
生前のルイ・フェルディナント(祖父)はテレビのインタビューで「国や領地を治めているか治めたことのある家」の娘と結婚しなければ継承権がなくなるという言い方をしていました。
祖父ルイ・フェルディナントは息子の適格性を確保するために、そのような言い方をしたのかもしれません。
もっとも、古来「同格の家」と結婚し続けてきたかといえば、そうでもなく、ヴィルヘルム2世が言い残しただけのようです。
君主制復活?
その後、問題の伯父も2015年に亡くなったし、家督相続問題は、その後、落ち着いているようです。
しかし、最近では、ゲオルク・フリードリヒが、かつて先祖のものであった城や美術品の返却を国や所有者に要求し、裁判に訴えるなどして物議をかもしています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。