ドイツ語は難しくない! というのは半分ウソで半分ホント。
言語の難しさは一概に言えません。系統の違う言語はどれも難しい。
そこで、ドイツ語の難しいところ、簡単なところをまとめてみました。
ドイツ語は難しくない
ある言語が難しいか簡単かは自分の母語とどれだけ似ているか、異なるかによるもので、言語そのものに難しさは一概に言えません。
英語は日本人にとっては難しいですが、ヨーロッパ人にとっては簡単なようです。逆にヨーロッパ人にとって日本語は大変に難しい言語です。
ドイツ語もまたヨーロッパの言語ですから、日本人にとって簡単な言語とは言えないでしょう。
しかし、ヨーロッパの他の言語と比較するなら、ドイツ語がとりたてて難しいわけではありません。
かつてほどの勢いはないヨーロッパですが、大言語(英語。ドイツ語・フランス語・ロシア語・スペイン語)は学習人口が多く、世界各地で共通語としての影響力を持っています。
ドイツ語も中央ヨーロッパでは母語話者が多く、世界的に学ばれている言語です。
日本語になったドイツ語
日本語になっている外国語(外来語)は英語が圧倒的に多いですが、ドイツ語から入ってきた言葉もけっこうあります。
医学 カルテ、アレルギー、ビールス、ギプス、ヒステリー、ガーゼ
科学 ナトリウム、エネルギー、
山岳・スキー ヤッケ、ゲレンデ、アイゼン、ザイル、ストック、ボーゲン
左翼 ゲバルト(内ゲバのゲバ)、シュプレヒコール、イデオロギー
哲学 アンチテーゼ、アウフヘーベン
大学 ゼミナール、テーマ、
お菓子 バウムクーヘン、キルシュトルテ
犬 ダックスフント、ドーベルマン
その他 アルバイト、メルヘン、ゲネプロ(ゲネラルプローベ)
ドイツ語が話されている国はドイツだけじゃない
ドイツ語は以下の国で母語として話されています。
ドイツ
オーストリア
ルクセンブルク
リヒテンシュタイン
スイス(大部分)
フランス(一部)
イタリア(一部)
ベルギー(一部)
スイスとオーストリアの間にある小さな国です。面積は小豆島ぐらいしかないので、地図(↑)上では、ほとんど点です。
英語よりやさしいところ
字が読める
英語は綴と発音があまり対応しない言語で中上級者でも自信を持って正しく発音できる人が少ない。
これに対してドイツ語は規則さえマスターすれば簡単に読めます。
初級ドイツ語教科書の冒頭には3ページ程度の「綴と発音」コーナーがあり、その規則さえ覚えれば誰でも自信を持って読むことができます。
慣れれば、外来語以外は発音記号を見ることはなくなります。
字面だけなら気合を入れれば一週間で読めるようになるでしょう!
単語が覚えやすい
英単語って、覚えにくいと思いませんか?
外国語をほぼそのまま取り入れて英語読みにしているものが多いからです。
たとえばdictionaryは「辞書」ですが、その構成要素は英語ではないので、意味のわからない音を丸覚えしなければなりません。
その点ドイツ語の「辞書」はWörterbuch=Wörter(単語) + Buch(本)。
基本語(「単語」「本」)の知識だけで、すぐに「辞書」とわからなくても何か言葉に関する本であることが想像できます。
基本単語は覚えなければなりませんが、かなり複雑な概念もドイツ語化されているので類推できることが多いし、覚えやすいです。
英語は語源がわからないと覚えにくい。それってラテン語やギリシャ語を勉強しろというのと同じではないでしょうか。英語なのに。
たとえるなら英単語の暗記とは、カナだけで日本語を覚えるような作業です。
かんじ(漢字、感じ、幹事)、
かんし(監視、関し、漢詩、冠詞)、
かじん(佳人、歌人、家人)、
かしん(家臣、過信、花芯)、
じかん(時間、次官、字間)、
しかん(士官、歯間、史観、弛緩)
日本語を覚えるのに漢字を知らなかったら、似た単語および同音異義語を区別するのに著しく理解に支障をきたすでしょう。
「漢語の多い日本語」(1)と「和語の多い日本語」(2)がひらがなだけで書かれているとイメージしてください。
(1)かじんが かんしを かんじで かいた。(歌人が漢詩を漢字で書いた)
(2)うたびとが やまとうたを ひらがなで かいた。
(1)が英語、(2)がドイツ語のイメージです。(1)は漢字を見ないと「?」ではないでしょうか。
時制がゆるい
現在・現在進行・未来→すべて現在形でOK!
時制の一致も原則としてありません。
ドイツ語をむずかしくするもの 性と格
「簡単、簡単」ばかり言っているとサギのようなので、ちょっと難しいところにも触れておきます。
性
ドイツ語の名詞には性(男性・女性・中性)があります。
主に定冠詞が違ってきます。
der Vater(父) | die Mutter(母) | das Kind(子) |
格
さらにドイツ語には格変化があります。
日本語では「が」「の」「に」「を」などの「格助詞」をつけて格を表しています。
ドイツ語では冠詞がこの役割を担い、
der Vater | 父が |
---|---|
des Vaters | 父の |
dem Vater | 父に |
den Vater | 父を |
のように変化するわけです。
他のヨーロッパ言語よりやさしいところ
「むずかしい」ところの後は、再びドイツ語のやさしい点の紹介です。
性や格変化のまったくない英語と比較するとドイツ語は面倒に感じられるかもしれませんが、性はほとんどのヨーロッパ言語にありますし、格もドイツ語だけの特徴ではありません。
英語以外のヨーロッパ言語と比較した場合、ドイツ語のほうが簡単な点は以下:
南ヨーロッパ言語より動詞変化が少ない
フランス語、スペイン語など南ヨーロッパの言語には「〇〇過去」や「△△未来」があり、動詞の語形変化が複雑です。
その点、ドイツ語には現在と過去しかありません。
東ヨーロッパの言語より格が少ない
前項でドイツ語をむずかしくするものとして挙げた格ですが、近頃話題のロシアやウクライナほか東ヨーロッパの言語には6~7格あります。
しかし、ドイツ語は4格しかありません。
格のある言語の中ではドイツ語は単純なほうです。
変化が多いことは悪いことばかりではない
そのほか動詞や形容詞も変化しますが、他のヨーロッパ系言語と比較した場合に特にドイツ語の特徴とも言えないので割愛します。
変化が多いことは悪いことばかりではありません。
メリットとデメリットがあります。
語形変化のデメリット
- 覚えるのが大変
- 面倒くさい
規則を覚えるのがまず大変。そして、実際に話したり書いたりするときには慣れないうちは表とにらめっこしながらでないと文が作れないもどかしさがあります。
しかし「どうでもいいや」とやっていると、いつまでたっても正確な文書が作れないので、多少困難でも基礎的な語形変化は初級の段階で覚え、使いこなしておく必要があります。
語形変化のメリット
- 品詞がわかる。
- 構文がつかみやすい。
「話す・書く」ときには苦労しますが、「聞く・読む」場合はむしろ変化があったほうが理解しやすいものです。
形から品詞がわかるので構文がつかみやすい。
例えば、以下のような文章があったとします。
abc def ghi jkl mno
つまり、意味がわからないですよね。
英語だと、意味がわからないと構文もわかりません。
「abc」が「def」するのか、「abc」の「def」が「ghi」するのかもわからない。
しかしドイツ語は名詞は名詞の、動詞は動詞の、形容詞は形容詞の形をしています。
つまり、
「abc形容詞 def名詞 ghi動詞 jkl形容詞 mno名詞」
まではわかる。
これだけわかれば、
「abc」の「def」が「jkl」の「mno」を「ghi」する。
という構文だけはわかります。
複雑な文書を読む場合、英語は意味がわからないと構文がとりにくいですが、ドイツ語は先に構文をつかんでから意味を類推することもできます。
まとめ ドイツ語のすすめ
- 英語よりはるかにつづりと発音が対応している。
- 時制がゆるい(現在・現在進行・未来=すべて現在)。
- 基本単語から類推できる。(”dictionary” vs. “Wörterbuch”)
- 南ヨーロッパの言語より動詞変化が少なくて楽。
- 東ヨーロッパの言語より格の数が少なくて楽。
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