Infusion d’Iris エントリー香水にいかが?
それはまだ私が香水に縁のない生活を送っていた頃、町の小さな香水店に入り、友人への贈り物用に洗顔用フォームを買うと、香水のサンプルがついてきました。
それがPrada のInfusion d’Iris。
それまで香水などつけたこともなく、香水なんて堅気の人間がつけるものじゃないぐらいに思っていました。その偏見を吹っ飛ばしてくれたのが、このInfusion d’Iris。
香水をつけない人にとって香水の匂いとは香水売り場の匂い。デパートの一角や空港の免税店で匂うツンとくるアレ。いろいろな匂いが混じりあって、全然いい匂じゃない。
しかし、このInfusion d’Irisには包み込んでくれるような優しさがあり、それまで私が香水に持っていた怪しくて下品なイメージを覆すものでした。
柑橘系の甘酸っぱさを華麗な花々が包み込む「シトラスフローラルな香り」……ではセールストークみたいだから、平たく言いましょう。お花屋さんでみかんをむき、ベビーパウダーをパタパタしたら、こんな感じかも。
成分は、
トップ | イタリアンマンダリン、チュニジアン |
---|---|
ミドル | ネロリ、レンティスク、ガルバナム、オリス、ウッディ |
ベース | アンバー、シダーウッド、ベンゾイン(安息香)、インセンス |
ほんわかとした温かみのある香りです。
カタカナ名称は微妙:インフュージョン ディリス
難を言えばそのカタカナ名称。ここまでアルファベットでInfusion d’Irisと書いてきましたが、カタカナ表示は「インフュージョン ディリス」。
香水名はフランス語が多く、これも一応フランス語のはずですが、「インフュージョン」は明らかに英語読み。たしかに「アンフュジオンディリス」では、よくわかりませんが、わからない名前は他にもたくさんありますよね。
例えばアニックグタールの「オーダドリアン」=「ハドリアヌスの水」。知らなかったら、まず、わからない。
かといって、日本語に訳すのは難しそう。
「あやめの煎じ出し」では売れないでしょうね。
「アイリスの抽出」でも、わけわからん。哲学? 化学?
エルメス「ナイルの庭」のように訳しても詩的に響くものはいいけれど、プラダのコレの場合は悩ましいことこの上ない。
「インフュージョン ドゥ プラダ イリス」というカタカナも見かけます。言語の混ぜこぜは変わらず。「ディリス」の語感が悪いとの判断でしょうか。確かに「ディスり」に似ています。
ともあれ、香りは素晴らしい。パウダリーなので、冬の寒い時期には心から温まる感じ。匂い袋のような香りなので、和服にも合いそう。
四角い瓶は人によっては殺風景と感じるようですが、シンプル・イズ・ベスト。使いやすく、手にもなじむ感じ(50ml)。ゴテゴテして使いにくい容器のモノよりよっぽど気に入っています。
日本には香水専門店がない!?
ところで、冒頭の香水デビューはドイツに住んでいた頃の話。
ドイツでは町にはいくつも総合香水店がありました。Douglas(ドゥグラス)という主に香水を販売する有名なチェーン店もあり、ドイツ中に支店があります。
日本では香水店はデパートや駅ビルの一角にあるものというイメージ。そのうちデパートは超有名ブランドを網羅的に置いていますが、駅ビルなどでは特定のブランドのみを扱う店(直営店?)が多く、総合香水専門店はネットショップ以外、あまり見かけません。私も、外国に出ることなく、日本にずっと住んでいたら香水に目覚めることはなかったかもしれません。
このように日本では香水に親しみにくい事情がありますが、気候風土の違いから来るものなのかもしれません。一年の半分はうっとうしい季節で、夏場、日本で使用できる香水は限られます(オーデコロン4711、オーダドリアン、ナイルの庭などは夏場でもおすすめ)。
Infusion d’Irisも、どちらかというと冬の香りです。ふかふかの毛布にくるまれて、まどろむ一時。そんなイメージ。


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似た香り:シャネル ココマドモアゼル、19番プードレ
インフュージョンディリスが発売された頃、口コミで、よくココマド(ココマドモアゼルCoco Mademoiselle)に似ていると言われていました。たしかにパウダリー感が似ていますが、ココマドはオレンジやベルガモットのシトラス色が強めです。
それよりも、シャネル19番プードレ(Chanel No. 19 Pudre)のほうがそっくりです。このプードレ、トップはオリジナルの19番と似ているのですが、時を経るにしたがってアイリスが強く出て、インフュージョンディリスと区別がつかないほど似てきます。
なお、発売年はココマドが2001年、インフュージョンディリスが2007年、19番プードレが2011年です。
最後まで記事をお読みくださり、ありがとうございました。
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