ドイツ・外国

【外国事情】国によって次元が違う(?)差別問題 ー アメリカの差別、日本の疎外

日本人として日本にいると「差別」を感じることはあまりありませんが、外国人はどうなのでしょうか。また、外国では、本当のところ、どうなのでしょうか。

黒人差別について考えさせられる動画に出会ったので紹介します。

日本で育ったアメリカ人ティファニーの場合

ティファニーさんはアメリカ人の両親から生まれたアメリカ人ですが、2歳で来日し、14歳まで日本で育ったので、英語より日本語が得意な日本人メンタリティーの若者に成長しました。

家では英語で話していたのに、アメリカに「帰国」しても学校の英語で苦労したり、カルチャーショックに悩んだそうです。

特に人種差別が衝撃的だったとか。ティファニーさんが「黒人」だったからです。

黒人であることによって身の危険を感じるアメリカ

アメリカは治安が悪いとは、よく聞きます。

しかし黒人であるということで、白人マジョリティの場合よりも危険な目に遭いやすいようです。

白人からは差別される。素行の悪い黒人からは攻撃される。警察は守ってくれない。

守ってくれないどころか、むしろちょっとでも疑いをかけられたら警察から乱暴されることを恐れなければならない。

ご両親の視点

動画『My Parents’ Perspective 親からの観点』(日本語字幕あり)ではティファニーさんのご両親がどうして日本に来ることになったのか、ティファニーさんら兄妹をどうやって育てたのか、ご両親が説明しています。

20分ぐらいから日本でなぜアメリカでの差別について教えなかったのか、25分ぐらいから「黒人」が実際にアメリカでどう扱われるかが語られます。

【My Parents’ Perspective 親からの観点】

ご両親のとても知的で和やかな人柄が伝わってきます。

それ以前のティファニーさんのインタビュー動画『I’m Culturally Japanese…』(英語。日本語字幕なし)が前提となっていますが、この動画だけで話は理解できます。

動画で知った両親の危惧

ティファニーはアメリカに一時帰国したときなどに両親から細かく注意を受けました。

「店で商品を取って戻したりしてはいけない」

「会計で並んでいるときや外に出るとき、どんなに面白そうでも(買わない)商品に触ってはいけない」

そうでないと、どろぼうと間違われるからです。

ご両親は娘に当時、そう言わなかったので、ティファニーは人種差別に関わる問題だと思っていませんでした。両親のこのインタビュー動画を見てはじめて「だからあんなにうるさく言ってたんだ~」と納得したそうです。

日本では「外国人」だが「黒人」ではない

ティファニーさんは、6年をアメリカで過ごすと、日本へ戻ってきました。

日本でまったく差別がないとは思いませんが、それについて詳しくは触れていません。ただ、日本では自分は「外国人」であって、「黒人」ではないとのこと。

別のアフリカ系の人が同じことを言っていたのを聞いたことがあります。

日本(アジア)人は、指をさしたり、面と向かって「黒いね~」と言ったり、アメリカ人がしないことをするけれども、アジアには黒人差別の歴史がないので欧米とは違うと。

アジアでは「黒い」はただのカラーで、それ以上でも以下でもない。

アメリカで「You are black」と言ったら、「教養がない」「いやしい」など、いろいろな意味がくっついた蔑みの表現なのです。

そこが全然ちがう。

夜中にヘッドホンをつけてスマホの音楽を聞きながら町を歩いていても襲われることはない。黒人が安心して暮らせる場所はここ(日本あるいはアジア)だと。

アメリカでは、始終「誰か見ていないか」「襲ってこないか」警戒していなければならないのだといいます。

公民権運動などで黒人差別は法律上撤廃されたはずですが、いまだに根深く残るものがあるんですね。

2020年に、警官が逮捕の際に黒人青年を死亡させた「ジョージ・フロイド事件」がありましたが、上の動画は、それ以前に配信されていたものです。

日本でも差別感情はありますが、アメリカは次元が違うようです。

西欧ヒューマニズムの限界

黒人差別の話ではありませんが、ヨーロッパ人の差別意識について考えさせられる本に会田雄次の『アーロン収容所』(中公新書、初版1962年、改版2018年)があります。副題が「西欧ヒューマニズムの限界」。

会田雄次は終戦後のビルマでイギリスの捕虜となり収容所で2年間労働させられ、そのときの経験を本にまとめて発表しました。

イギリス人は人間とそうでないものの区別を、同じ人類の間にも設けることができる人々であるようだと言っています。

大量の家畜を飼育してきた人々には、それと同じノリで捕虜を合理的に統率することができるのではないかという描写は比較文化論的におもしろい。

もっとも合理的に統率されてしまった側としては複雑なものがあるようですが。

いまでも欧米社会では、人間(マジョリティ)とそうでないもの(マイノリティ)の線引きのようなものがあるのかもしれません。

ハーフは辛いよ アフリカ系ハーフ姉妹の場合

日本では、はっきりとした境界線はありません。コミュニティに受け入れられさえすればすべてOKのようなところがある。地方で地元の人々に暖かく迎えられたティファニ―さん一家は、黒人差別を感じることがなかった。

ただし、そもそも受け入れられるかどうかが問題です。

ハーフで損した・嫌だったこと

ナイジェリア人の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフ姉妹によるYouTubeチャネル「タナカさんinアメリカ」に次の動画がありました。

【ハーフで損した・嫌だったこと5選】

最初は明るく、軽い感じでスタートする動画ですが、後半はズドーンと重くなります。

容貌が特徴的なことから、いじめられたり、からかわれたりした話です。

生徒ばかりでなく、先生からも「国に帰れ」などと言われたことがあるそうです。

二人は今、アメリカ在住。いろいろな出自の人がいるから、日本で経験したような嫌なことは全然おこらないので楽だといいます。

でも日本に帰国すると、外人あつかい。

言葉がわからないと思われて、聞こえるような大きな声で悪口を言われたりするそうです。

排除の社会

まったくの外国人であるティファニーさんほかの黒人さんたちは日本の安全を高く評価してくれますが、ハーフの人は日本人ですから、当然、日本人として扱われることを望みます。

日本で育ち、完璧な日本語を話し、中身は日本人なのに外見が変わっているために、日本人と見てもらえないことに堪えられず、外国に行ってしまう。

残念なことです。

もっとも、疎外されるのはハーフだけではありません。

ハーフは見た目からして異なるので、最初から「違う」と認識されます。しかし、ハーフでなくてもちょっと変わった人を排除するような雰囲気が日本にはあります。

アメリカの「差別」とは違いますが、日本は異質なものを疎外する国とでもいいましょうか。このままでは特別な能力・経験を持つ人々を外国へ流出させてしまいます。

それは国の将来にとってマイナスに働くのではないでしょうか。

追記

私がドイツにいたころ、自分自身は人種差別を感じることはほとんどありませんでした。アジア人は少ないし、特に日本人は差別される種類の外国人ではありませんでした。

しかし、コロナ禍にあって、ドイツ在住の東洋人(日本人を含む)がそれまでにない嫌がらせを受けるようになったという話を聞きます。

最後まで読んでくださってありがとうございました。