本棚を整理していたらなつかしい本が出てきました。
『音読したい英語名言300選』(中経出版、2002年)
高校の恩師である田中安行先生監修の本です。
書店(あるいはネット)で見かけたときには卒業して20年ぐらい経っていたのですが、恩師の名を見て懐かしくなって購入。
その後、風のうわさで田中先生は故人となられたと聞きました。
いま見ると懐かしさ100倍です。それに年を重ねたためか、名言もより心に響きます。
『音読したい英語名言300選』
「音読したい英語名言」のタイトル通り古今の偉人たちの名言が集められています。
第1章 これだけは覚えたい順
第2章 もう少し覚えたい順
第3章 もっと覚えたい順
第4章 できればここまで覚えたい順
第5章 いっそここまで覚えたい順
という章分けで、1章あたり50~60程度の名言が並んでいます。
前のほうが有名とも限らないし、より名言度が高いかというとそうでもないので、順位には関係なく読者が気に入ったものを覚えたらいいと思います。
ケネディはやっぱり人気
最初は有名なケネディ演説から。
And so, my fellow Americans, ask yor what your country can do for you; ask what you can do for your country. (John F. Kennedy)
だから、私の友、アメリカ国民の皆さん、祖国が自分たちに何をしてくれるか問うのではなく、自分たちが祖国に何ができるかを問うてください。(ジョン・F・ケネディ)
ケネディは冒頭を飾っているだけでなく、「これだけは覚えたい」とされる第一章に限れば最多(3フレーズ)も掲載されています。名文句を残している大統領なんですね。
ケネディの名言を、もうひとつ紹介しておきます。
Forgive your enemies, but never forget their names. (John F. Kennedy)
あなたの敵を許してあげよう。しかしその名前は、決して忘れてはならない。(ジョン・F・ケネディ)
政治家にだまされないようにしよう!
The great masses of the people will more easily fall victims to a big lie than to a small one. (Adolf Hitler)
国民の大部分は、容易に小さなうそよりも大きなうその犠牲になるものである。(アドルフ・ヒトラー)
ヒトラーはそのとおりに語り、そのとおりに大衆を信じさせました。
政治家の大きなウソににだまされないようにしましょう。
Nothing is so admirable in politics as a short memory. (John K. Galbraith)
政治においては、記憶力が悪いことほど素晴らしいことはない。(ジョン・K・ガルブレイス)
そういえば昔「記憶にございません」というセリフが流行ったことがありました。
過去に政治家が何を言っていたか、こちらは覚えておきましょう。
クラーク博士の「青年よ大志を抱け」
札幌農学校で教鞭をとったクラーク博士の「Boys, be ambitious 青年よ大志を抱け」は有名ですが、その続きを知らない人は多いのでは?
Boys, be ambitious, not for money, not for selfish accomplishment, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for attainment of all that a man ought to be. (William S. Clark)
青年よ大望を抱きなさい。金や利己的な功績のためではなく、名声と呼ばれるあのはかないものを求めてではなく、人間としてあるべきあらゆるものを身につけようという、大きな望みを持ちなさい。(ウィリアム・S・クラーク)
これを見て、「大志(大望)」のイメージがちょっと変わりました。
紹介したい名言は他にもたくさんあるのですが、きりがないので、それは本を見ていただきたいと思います。
今では電子書籍版が出ているようです。
英語とドイツ語を教えていた田中先生
すてきな名言集を監修された田中安行先生は本の「監修者紹介」によると「東京都の中学、高校教諭、白梅学園短期大学教授を経て」本書刊行時(2002年)には「新英語教育研究会副会長」でした。
私は都立立川高校で田中先生に教えを受けました。当時、田中先生は英語とドイツ語の教鞭をとっておられ、私にとってはドイツ語の先生でした。
公立高校で第二外国語があるところは珍しいと思われがちですが、古い学校にはあるようです。
高校での第二外国語
外国語科目は週に5時間ありました。
1年生は英語を5時間。
2~3年生は英語3時間、第二外国語2時間(英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・中国語の中から選択)となっていました。
ロシア語と中国語はクラスが成立しない場合もあったようですが、ドイツ語とフランス語はたいてい成立していました。
私たちの学年のドイツ語クラスは30人以上いたと記憶しています。
「第二外国語」で英語を選択することもでき、「2外の英語」とか言ってました。
語義矛盾ですよね。
受験もありますし、2外の英語は「他の外国語なんかやってられない」「興味ない」という人向け。
先生のあだ名はグーテン田中
田中先生はいつも穏やかで優しい先生でした。柔和な笑顔を浮かべ、語りもソフト。
生徒から敬愛されていて、親しみを込めて「グーテン田中」とあだ名がついていました。
ドイツ語の授業は、いつも最初にGuten Tag(グーテンターク=こんにちは)で始まりました。
だから「グーテンターク」と「田中」をあわせて「グーテンタナカ」です。
ドイツ語人形劇
一通り文法を学び終えた頃にいくつかのグループに分かれて人形劇を行ったことが印象に残っています。
みんな楽しんで演じていました。
セリフをしっかり覚えていたグループもありましたが、たいていは読んでいましたね。
私はナレーター役。覚えようと試みましたが、長かったので無理。やはり読みました。
それが……よく覚えていない(汗)。
たぶんグリム童話の「いばら姫(ねむり姫)」です。 王子様のキスで100年の眠りから覚めるお姫様の話。
無謀にもドイツ語受験
たいていの学生は受験は英語で受けますが、私を含めて数名ドイツ語受験をしようという生徒がいました。
田中先生はそんな私たちのために特別授業をしてくださいました。ありがたいことです。
しかし、当時はその特別さがよくわかっていなくて、お礼なども特にしなかったような気が……。
最初の翻訳作品である『死後世界の探求』(関連記事はこちら)をお送りしましたけど。
そうですよね。田中先生、すみません!
大昔、第二外国語による大学受験は簡単だった……らしい
どうも昔、大学受験のドイツ語やフランス語がバカみたいに簡単だった時代があるそうです。それで古い進学校には第二外国語が設けられていると聞いたことがあります。
私の時代にはそれほど簡単ではなくなっていたのですが、身の程知らずにも英語ではなくドイツ語で受験してしまいました。
第二外国語受験のデメリット
当時は何も考えていなかったとしか言いようがありません。
ドイツが好きで、早くドイツ語が勉強したかったからドイツ語をはじめ、勢いで受験してしまった。
それだけ。
結局、大学でドイツ語を専攻しましたから、早めに勉強しておいたことはアドバンテージとなりましたが、基本的に受験ドイツ語はおすすめしません。
ドイツ語で受験できる大学は限られていますから、下手をすると英語とドイツ語の両方で受験しなければならなくなります。
帰国子女であるとか、ハーフであるとかドイツ語受験が有利となる特別な背景があるなら別ですが、普通の日本人はやめておいたほうがいいでしょう。
第二外国語受験のメリット(?)
ただ、ドイツ語の入試問題はオーソドックスです。
「次の文を日本語に訳せ」「次の文をドイツ語で書け」
のような独文解釈とドイツ語作文の課題が出ます。
英語でこんな問題を出したら採点が大変ですが、ドイツ語は受験者が少ないのでOK!
重箱の隅をつつくような問題はないので、何らかの点数が取りやすいでしょう。
また、あくまでも推測ですが、英語以外の受験者が珍しいので、希少価値を買われて甘めに採点してもらえる可能性もあるかもしれません。
ゼロか百かはっきり点数が出るような試験問題ではないことが多いので、採点基準を甘くしてゲタを履かせることはできるでしょう。
ただしセンター試験はマークシートなので点数がはっきり出ます。
ドイツ語の恩返し
卒業して数年たったころ、母校在勤の先生から、「ドイツ語で受験する在校生がいるので、ちょっと話をしてやってくれませんか」と頼まれました。
当時、田中先生は高校を去られており、ドイツ語の授業はあっても、おそらく非常勤講師の方によるもので、特別授業などしてもらえなかったのでしょう。
私でお役に立てるならと引受け、母校に行きました。その時に、受験ドイツ語の要領を教えてほしいという話になり、その後、何回か授業をしました。
声をかけてくださった先生には「ちょっとお話をしてもらおうと思っただけで、こんなにしていただくつもりはなかったんですけど……」と大変に恐縮されてしまいましたが、私としては恩返しができて、少し気が楽になりました。
田中先生に感謝!
田中先生には何もお返しできませんでしたが、先生のご冥福をお祈りしながら、『音読したい英語名言300選』改めて読み返しています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。