秋篠宮眞子内親王殿下が小室圭さんとご結婚されてアメリカに渡ることが10月1日に発表されました。
2017年の婚約報道から4年、さまざまな報道がなされてきました。
私は、誰がどう言ったかなど、あまり詳しくはないのですが、ひどい誹謗中傷は聞こうとしなくても耳に入ってきます。
関係ない私でも気分が悪くなりますが、渦中のご本人は大変だったことと思います。
眞子さまは複雑性PTSDを発症されているとか。
日本から亡命するような形でアメリカへ。おいたわしいことです。
報道がひどい SNSがもっとひどい
マスコミ報道もどうかと思いますが、一般国民の(望むらくは一部の人の)対応もひどい。
よく知らないのに批判していますね。
気になる皇室だからこその炎上
もっとも、そこにあえてプラス面を見るとすれば、みんな皇室に関心があるということです。
「人の結婚話に口出すな」と言われても、こと皇室だけは赤の他人ではないという気持ちがあって、なんやかんやと言いたくなる。「どうでもいい」とスルーされるよりは良いとも言えます。
非難しかない報道に疑問
しかし、皇室報道のあり方に関しては疑問を呈さざるを得ません。
一方的な「非難」しかないからです。
ほかのことに関しては、「実はこうなんだよ」的な反論があるものですが、皇室の方々は軽々しく発言できないし、良識ある人は黙っている。
そして炎上商法なのか何なのか、煽るような発言ばかりが巷に流れています。
そんなメディアにさらされた国民はだんだんアンチになっていきがちです。
エーリヒ・フロムと『自由からの逃走』
そんなこんなをつらつらと考えていたときに読んだ本に妙に納得。
エーリヒ・フロムの『自由からの逃走』(東京創元社、1951年初版、1975年新版)。
エーリヒ・フロム(1900~1980)はドイツ、フランクフルト・アム・マインにユダヤ人の両親のもとに生まれました。学生時代は社会学・心理学・哲学を学びます。
1933年、ナチスが政権を握るとスイスのジュネーブに移り、1934年には、さらにアメリカに移住しました。
原書 ”Escape from Freedom” は1941年に刊行されています。ナチス・ドイツの台頭にデモクラシーの危機を感じて書かれた本です。
ナチスが生み出された背景を語るにあたってドイツの政治・経済・社会から説明する人は数多くいますが、フロムの『自由からの逃走』は人々の心理に注目しています。
わかりにくいところもありますが、全体としては、そう難解な本ではありません。
報道と、その影響には関係があります。
ちっとも自由でない現代人
『自由からの逃走』には「自由意志」を持っているはずの近現代人が、実は謎の権威に操られているさまについて書かれています。
近代に入って階級社会がなくなり、「強制」されることはなくなったはずなのに、ちっとも自由でない。
われわれの願望――そして同じくわれわれの思想や感情――が、どこまでわれわれ自身のものではなくて、外部からもたらされたものであるかを知ることには、特殊な困難がともなう。それは権威と自由という問題と密接につながっている。近代史が経過するうちに、教会の権威は国家の権威に、国家の権威は良心の権威に交替し、現代においては良心の権威は、同調の道具としての、常識や世論という匿名の権威に交替した。われわれは古い明らさまな形の権威から自分を解放したので、新しい権威の餌食となっていることに気がつかない。(p279)
現代人は自由意志を持った個人だと思っていても、それは幻で、実は「個人の自我は弱体化」し、自分で自分を機械の一部、道具にしてしまっているのです。
他人からこう考え、感じ、意志すると予想されると思っている通りのことを、考え、感じ、意志している。(p279)
皇室のことも小室さんのことも知らない人があれこれ言う。その情報源は週刊誌やワイドショー。本当かどうかわからない情報をもとに世論が作られて巻き込まれていく。
マスコミが権威になってしまっている状況は、何ともなげかわしい。
無力感や孤独感が生む破壊性
フロムは人間は孤独に絶えられなくて、ある種の権威を求めてしまう傾向について触れています。
(権威主義的性格は)無力な人間や制度は自動的にかれの軽蔑をよびおこす。無力な人間をみると、かれを攻撃し、支配し、絶滅したくなる。(p186)
そして、無力感や孤独感が強くなると、人間は破壊性を増すといいます。もちろん本人は何かを破壊するつもりなどなく、さまざまな理屈で行動を合理化・正当化します。
愛、義務、良心、愛国心などが、これまで他人や自己を破壊するためのカムフラージュとして利用されてきたし、現在も利用されている。(p198)
眞子内親王を非難した人のなかには、自称「愛国者」が多いようです。
個人のうちにみられる破壊性の程度は、生命の伸張が抑えつけられる程度に比例するように思われる。……生命は成長と表現と生存とを求める。もしこの傾向が妨害されると、生命を求めるエネルギーは、分解過程をたどって、破壊を求めるエネルギーに変化するように思われる。……生命の求める衝動が妨害されればされるほど、破壊を求める衝動は強くなる。生命が実現されればされるほど、破壊性は弱くなる。破壊性は生きられない生命の爆発である。生命を抑圧するこれらの個人的社会的条件は、破壊への激情を生みだし、この激情がいわば貯水池となって、特殊な敵対的傾向――他人にむかうにしろ、自分自身にむかうにしろーーを助長する。(p201)
コロナ下の鬱屈した社会状況も、バッシングの過激化につながった一要因かもしれません。
情報源は慎重に選ぼう!
自分で自分を洗脳
誰もがいろいろな人の意見や考えに影響を受けています。
他からの影響も受けない人などいないでしょう。
ただ、自分が何を見るか、何を読むか、そのことによって自分の考えが形成されることを自覚しておく必要はあるでしょう。
番組や動画、本や新聞・雑誌、どれも視聴者・読者に影響を与えます。
情報や意見に接するだけで、その影響を受けるのです。勉強でも遊びでも同じ。
何をやっても、大なり小なり自分で自分を洗脳するようなものですから、つきあう仲間や接する情報は選んだほうがいいでしょう。
そんなことを考えさせられる一冊でした。
人間の性質は変わらないので、本の内容は現代にも通じます。
悪意ある人は少数派
眞子内親王は下賜金を辞退しても、病気を公表しても、何をしても叩かれる状況。
皇室の方々が国民不信に陥らないことを祈ります。
文句を言っている人も、ほとんどは皇室を大切に思っているからこそ気になるのです。
心無い発言をしている人もいますが、実際に悪意ある人は少数派だろうと思います……そう願います。
皇室のことを知るために
大半の日本人は皇室に悪い感情など持っていません。
眞子内親王のご結婚も、本当は「おめでとうございます。お幸せに」と言いたい。
ただ、そういう人はやんやと発言しない。
悪意しかないように見える報道・言論が目立つ状況になっているのも、皇室のことについてみんながよく知らないという一面もあるのではないでしょうか。
皇室のことを知るためにオススメは次の2冊!
『日本一やさしい天皇の講座』
倉山満著、扶桑社
『国民が知らない上皇の日本史』
倉山満著、祥伝社
『日本一やさしい天皇の講座』と『国民が知らない上皇の日本史』は天皇陛下のおことばから平成31(2019)年の譲位に向けての期間、よりによって保守を自称する人々が天皇陛下の譲位に反対していた頃に書かれました。
世界最長不倒の歴史を持つ国、日本とその象徴である皇室について考えてみませんか。
最後まで読んでくださってありがとうございました。