ドイツ・外国

【ドイツ事情】「音楽の国ドイツ」はウソ!? 音痴なドイツ人 ~音楽と言語~

microphone

自分のことを音痴だと思っていませんか? 安心してください。日本人に音痴はいません。

今回は、かつて住んでいたドイツで発見した意外な事実について、お話しします。

「音楽の国」ドイツは嘘

ドイツと言えば「音楽の国」!

バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーベン、シューベルト、シューマン、メンデルスゾーン、ワーグナー……名だたる音楽家を輩出したドイツですから、そのことには誰も異論がないと思います。「モーツァルトはオーストリア人だ」とか細かいことは置いておきましょう。

しか~し、実際のドイツ人、実はものすごく音痴です。

信じられないかもしれませんが、これは事実。

私は日本とドイツ以外の国をよく知らないので、ドイツ人が国際的にとりたてて音痴なのかどうかは言い切ることができません。しかし、音楽的と言われるドイツ人がコレですから、他は推して知るべし……なのかも。

ドイツ人音痴はスケールが違う

ドイツ人の名誉のために申し上げておきますが、ドイツにも歌が上手な人と下手な人がいます。そして、普通の人は普通です。

しかし、「こんな音痴、見た(聞いた)ことない」と思われる、日本ならば100~1000人に一人ぐらいしかいない音痴がドイツには10人に1人ぐらいいる……感じ。

もっとも統計をとったわけではないので肌感覚ですが、とにかく「音痴」のスケールが違います。

singing boy

日本人の「音痴」は、音 程 が 外 れ て い る というだけです。

しかし、ドイツ人の「音痴」には 音 程 の 概 念 が な い

「ド」から「ミ」に上がるのも「ソ」に上がるのも同じ。あるのは「高い」と「低い」だけ。それも合っていないかもしれない。

そもそも「音程がハズれる」とは、正確な音程でなくとも、その近くの音を出していることをいいます。半音違うだけで、ハズれていることがはっきりわかります。一瞬だけ外して、すぐに戻ればいいですが、半音ずつ全部ハズしていったら、それは立派な音痴です。

しかし、ドイツ人音痴のハズし方は半音や1音のレベルではありません。そうなると、もう何をやっているのかわからない。

ひどい場合は、歌を歌っているのかも定かではないので、耳障りですらありません。

日本人の音痴は原曲から音がハズれているのがわかるので、耳をふさぎたくなるのですが、ドイツ人の音痴には、ただただ、あきれるばかりです。

アレを音痴と呼ぶならば、日本人に音痴はいません。

カラオケ

人が集まるとき、何をするか。まず「飲む・食べる」でしょう。飲み食いは誰でもできるからです。そして、「二次会はカラオケでも行こうか」というノリになるのは、日本では誰でも歌えるからです。10人中4~5人しか歌えない世界では、そういう流れにはなりえません。

したがって、ドイツでカラオケが定着することはないでしょう。カラオケという娯楽が成り立つには、10人が10人歌えることが前提です。

ケタ外れの音痴とプロ顔負けの素人歌手

ドイツ人の音痴についてひどいことを書いてしまいましたが、その一方で、ドイツには、特別な音楽教育を受けていないのにオペラ歌手のように歌ってしまう人もいます。

日本では「オペラ歌手のように」歌う人は、音大出であったり、少なくとも先生について習っていたりするものです。そうでもない限り、なかなかプロ級のクラシック発声ができるようにはなりません。しかし、ドイツでは教会などでピーチクパーチク歌っているだけで豪快な歌手になる人がいます。

それに、超音痴のドイツ人にしても、いわゆる発声だけはしっかりできています。ここでいう「発声」とは、学校の音楽でよく言われた

「ノドを開けて~」「お腹から声を出して~」

式の発声です。

ドイツ人は普段の話し声からして、喉がしっかり開いているし、お腹から声が出ています。もし音痴のドイツ人が「音程の概念」さえ身につければ、オペラ歌手への道は、音痴ではない普通の日本人よりはるかに近いように思われます。

日本の音楽教育に「?」

現在、私たちが音楽の時間に教わっているのは西洋音楽です。歌の場合、西洋の文化(言語を含む)から生まれた発声法です。ヨーロッパ人はすでに喉が開いていて、お腹から声を出しているので、わざわざ発声法を転換する必要がない。それに対して、私達は普段の話し言葉とは次元の違う発声を求められるのです。

欧米人の会話を聞いていると、響きが違います。ボボボボボと地の底から響いてくるような音、パコーンと開いて遠くまで通る音、いずれにしてもささやくような日本語とはまったく異なります。日本人が大声を出すときは、たいてい絞り出しています。

酔っ払いが管を巻いたときなど、例外的に喉の開いた音になるときもありますが、開けているのではなく、コントロール不能の状態で開いてしまっている状態なので、だらしなく感じられます。

いわゆるクラシック音楽の発声には、それに似たものを求められる。この発声にはある種の勇気がいります。教養が邪魔すると言いましょうか。

「そんなこと、恥ずかしくてできるか~」

という感じ。

同様にヨーロッパの言語を「正しい発音で」話すことには、能力以前に実は心理的なハードルがあるのかも。

それで、日本人は一定の訓練を受けないと、「オペラ歌手のよう」にはならないし、ヨーロッパ言語を学ぶ場合にも、それらしい発音にならない。

学校で強制される、あのコッ恥ずかしい発声でなく、自然に歌えるような日本語にあった音楽教育は、できないものでしょうか?

日本人が音程に敏感なのは言語のおかげ

音程の話に戻りますが、日本人に音痴が少ないのもまた言語の性質によると思われます。日本語は高低アクセントのある言語で、「アメ(雨)」と「アメ(飴)」の音の上がり下がりが違います。「ハシのハシにハシ(橋の端に箸が)落ちている」と言って通じる言語です。

また音節ごとに山があり、それが正しく言えないと、最悪、意味が通じません。

有名なのは「すもももももももも(李も桃も桃)」。

音が高低することによって「李も」「桃も」「桃」という三単位の山を作り、意味を伝えています。山になるはずの一単位の途中で音が高低したら、意味不明の文章になってしまいます。

確実に音程を上下させることを前提としている言語ですから、音の高低には敏感にならざるをえません。だから「音程の概念」は日本人全員が持っています。

音の高低というなら声調言語の中国語のほうが、もっと細かく意味が変わります。そのせいか中国には絶対音感の持ち主が多いそうです。

中国では「すもももももももも」などという一文レベルにとどまらず、「シー」が91回続く『施氏食獅史』という物語があります。たしかに「シーシーシーシーシーシー……」と「シー」しか聞こえません。

日本に話を戻すと、演歌や民謡は声を詰めたような発声が特徴的です。いわゆる「こぶしを効かす」というアレ。「いかに出さないか」を工夫したようなあの歌い方は、小声が普通の日本語の中から生まれた文化と言えるでしょう。

playing guitar

声楽(クラシック)は以上の理由で、あまりオススメしませんが、日本には音楽が溢れています。子どもの頃からピアノやギター、バイオリンなど何かしら楽器を習っている人は少なくありません。大人向けのレッスンも盛んで各地に音楽教室があります。素人音楽家のレベルは、おそらく「音楽の国」ドイツより高いと思います。

のように全国展開しているスクールもあるようですね。

自分は音痴だと思っている人も、高低アクセント言語で生活している日本人であるというだけで、実は、一定の音感保証付きです。

音楽、始めてみませんか?

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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