「近代史って、よくわからない」と思いませんか?
こんにちは。香りのブログまぐのりあです。カテゴリー「ライター部屋」ではフレグランスから離れて、本の制作など執筆業について語っていきます。
今回は私がアシスタントを担当した本の中から、倉山満先生の著書『世界一わかりやすい日本憲政史 明治自由民権激闘編』(徳間書店、2019年)をご紹介します。
倉山満憲政史シリーズ第一弾です。
準備に苦労したかいあって良書の誕生!
倉山工房の世界で、本の制作過程について書きました。ライターの仕事とは、端的にまとめると、取材音声に基づいて話をまとめること。
しかし、この本は、その前が大変でした。
- 升味準之輔『日本政党史論』の該当巻を読み込んで年表化する。
- 『日本政党史論』中の参考文献に当たり、年表に加筆する。
取材時に必要な資料となる年表づくりに、普段、編集執筆にかかる時間と同じか、それ以上かかりました。
『日本政党史論』は全7巻の大著です。「該当箇所」だけでも1~5巻は必要でした。
該当各巻に本の制作に不必要な箇所もあります。ただ、要不要の見当をつけにくく、結局ぜんぶ読むしかありませんでした。
しかも引用文は古い文章なので、大変に読みにくい。いちおう明治以降の史資料ですが、漢文のような文章もあります。読んで読めないことはないものの、漢検準一級レベルの漢字が並んでいて、慣れが必要です。
苦労した甲斐あって(?)、明治の政治史の流れがよくわかる良書ができあがりました。
日本史も世界史も得てしてキーワードの暗記だけで終わり、その意味づけがよくわからないことが多いですが、どうして事件や戦争が起こったのか、その背景や前後関係、そのときの日本国内外の政治状況をからめて解説しているので、「そうだったのか」と思えるはずです。
日本史の副読本におすすめ!
拒否権の日本近代史
「拒否権の日本近代史」なにやら難しそうな小見出しと思われましたか。
「拒否権」という言葉は、学校では国連の五大国がどうのこうの……という文脈でしか出てきませんよね。
著者は、ときの政権の邪魔する勢力の持つ力をこう呼んでいます。場合によっては内閣をつぶす能力です。
政治を語るとき、リーダーシップには着目されますが、「拒否権」は盲点となっています。そして、巷の歴史概説書は国のトップに立つ「権力者」の動きを追います。しかし、憲政史は逆の発想でとらえたほうが、実は、わかりやすいのです。
実際に権力を握っているのは、実は、首相や内閣ではありません。
日本近現代史は拒否権を持っている者が動かしている!
拒否権で見ると歴史の見方が変わります。
『世界一わかりやすい日本憲政史』では拒否権集団が強いのが近代史の特徴と捉え、拒否権から見た日本近代史を描きます。それで、当初のタイトル候補は「拒否権の日本近代史」でした。
しかも、企画の段階では山県有朋・原敬・床次竹二郎・木戸幸一の四人に焦点を当てるはずでした。
しかし、取材を進めていくうちに、山県有朋はなかなか出てこないわ、明治すら終わらないわ……で、これは一冊に四人も入れられないということになりました。
明治にしぼり、とにかく日露戦争だけは終わらせました。その分、かえって充実した明治史となりました。
外部校正者が欲しがった本
版が組み上がった後、誤字脱字を訂正する校正作業があります。
著者および担当アシスタントも文字校正しますが、徳間書店さんも独自に校正を第三者に依頼していました。
徳間書店学芸編集部の力石幸一氏によると、
「校正者が本を欲しいって言ってきたんですよ。こんなこと、あんまりないんですけどね」
本を読み慣れた人から評価してもらえたことは、とてもうれしく思いました。
ちなみに『あしたのジョー』に力石徹(りきいしとおる)というキャラクターがいますが、徳間書店の力石さんは「ちからいし」さんです。
『世界一わかりやすい日本憲政史 明治自由民権激闘編』紹介動画
倉山先生が主催する「ちゃんねるくらら」では毎日動画を配信しています。以下は『世界一わかりやすい日本憲政史』の紹介動画です。
明治・大正史をより深く追いたい方は、アイキャッチ画像に並ぶ『桂太郎 日本政治史上、最高の総理大臣』(祥伝社)および『史上最強の平民宰相 原敬という怪物の正体』(徳間書店)も合わせてお読みいただけると幸いと存じます。


最後までお読みくださり、ありがとうございました。
なお、本ブログは個人ブログであり、サイトの記述には著者や他の工房員とは異なる視点も含まれます。