【ライティングアシスタントチーム倉山工房・編集協力担当が語る制作書籍紹介】
2023年2月の新刊、樋口恒晴先生の『日本の死角 なぜこの国の防衛基盤はかくも脆弱なのか』(ビジネス社)はあるべき陸軍・海軍・空軍についての本。
キャッチコピーは
「防衛力を高める“日本改造計画”が1冊でわかる!
省庁横断の政策に着手せよ!
シン日本列島改造論」
著者・樋口恒晴先生について
樋口・倉山関係
樋口恒晴先生は、倉山満先生(著作:倉山満の世界)の尊敬するお師匠さま。
その研究姿勢は綿密緻密かつ細密。
とにかくきっちりしています。
だから倉山満先生も「倉山くん」呼ばわり。
でも、書籍のための取材中、樋口先生が誰もわからない冗談の入った、ぶっ飛んだ説明をはじめると、倉山先生がおさえるシーンも:
「先生、なんで自分の本をそんなにわかりにくくしようとするんですか!」
多忙な樋口先生は冗談好き
樋口先生は、大学での授業・業務が忙しく、これまで講演や執筆の依頼を断っていたそうです。
そのため、軍事に関する深く膨大な見識を持ちながら、あまり多くの著作物を出していらっしゃいません。
しかし、寡作のうちの一冊が、同じくビジネス社から『「平和」という病~一国平和主義・集団的自衛権・憲法解釈の嘘を暴く~ 』が出ていますので、ぜひどうぞ!
おそらく慎重で細密な性格から、これまでライティングアシスタントを使ったこともなかったようです。
そんな樋口先生のお仕事でしたから、ライターとしては、ちょっと緊張。
でも、とっても優しくオチャメな先生でした。
取材中の冗談も楽しかったんですが、
「冗談は信じる人がいると困るので書かないでください」
ということで、本はいたってまじめな内容となっています。
内容は濃い~ですが、教室で講義をするような語り口。
「デス・マス調」の読みやすい本ですので、ご安心を。
あるべき軍隊
ちゃんとした軍隊は必要
「自衛隊は軍隊ではない」と言われますが、憲法論はともかく、日本のような経済大国が軍隊を持たないでは国際信義にもとります。
国際的に責任ある行動を取るためには、自衛隊にはちゃんとした軍隊であってもらわなければ困る。
いわゆる陸・海・空の軍隊はもちろん、インテリジェンス(防諜・諜報をふくめた情報管理)も充実させる必要があるわけです。
ロジスティクス(兵站)が重要
樋口先生の本の独特なのは、ロジスティクス(兵站)に重きをおいているところです。
樋口先生はミリタリーオタクが喜びそうな武器を「正面装備」と呼びます。
そして、
「正面装備については『必要なだけ持つべきだ』の一言で終わりです」
とのこと。
最新式の優れた装備を持ったところで、それを支える体制ができていなければ、結局、その威力を発揮できないので、どうにもならないわけです。
支える体制、兵站に注目した著作が本作『日本の死角』
空港や港などの重要施設に関して、その防御や仕組みについて考察。
類書のない企画です!
独自の視点で防衛問題を斬る!
海自と空自、緒戦では逃げなければならない?
ロシアや中国が本格的に攻めてきたら、海自・空自は何をしなければならないか。
答え:逃げなければいけない。
今の状況ではそういうことになるようです。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、そのぐらい対応力がないし、守れていない。
自分を守れないようでは国など守れません。
「米軍がなんとかしてくれる」という基本コンセプトから改める必要があるわけです。
本書は、ほとんどの日本人が知らない話がたくさん。
私もそうですが、軍事や自衛隊の事情に詳しくない人にとっては最初から最後まで、びっくりすることだらけ。
一に予算、二に予算、三四がなくて、五に予算!
とにかく防衛省・自衛隊は予算不足なんです。
古くはGNP、最近ではGDPの1%とか2%とか、よくわからない基準で四の五の言ってますが、戦は相手がある話ですから、軍備は相対評価のはずです。
軍備ばかりにつぎ込んで国民経済が破綻するようでは困りますが、今の日本の状態では外交もままならない状態。
軍事とは何か、何が必要なのか、プライオリティの高い事柄は何か、本書を読んでいただくとそれがわかります。
とりあえず防衛費増額が決定されたようですが、それを正しく使っていただくためにも、本書の意義は大きい。
巻末鼎談 樋口恒晴vs江崎道郎vs倉山満
巻末には江崎道朗先生、倉山満先生を迎えた鼎談が掲載されています。
江崎先生の一言一言がキャッチーで、この本の本質をまとめてくださいました。
いわく
「防衛省・国交省・総務省・官邸の全員、そして、日本の防衛を立て直したいと思う人みんなが読まなきゃいけない本」
「軍事的合理性に基づいて脅威対抗型の防衛組織・施設の整備をしていくにあたっての具体的な工程表」
「どうやったらいいのかわからない建設業者のための指導書」
それもアリだと思います。
「軍事の素人は作戦を語り プロは兵站を語る」のだそうで、本当の軍事を語りたい人にぜひとも読んでもらいたい本なのです。
私も軍事について詳しいわけではありませんが、このお仕事を通じて、だいぶ勉強させていただきました。
軍事を語るには欠かせない一冊!
ぜひご一読を。
本当は「インテリジェンス」の章もあった
取材中、樋口先生はインテリジェンスのお話もなさっていて、第5章は「あるべきインテリジェンス」となるはずでした。
しかし、本が厚くなりすぎるので、本書ではカットとなってしまいました。
インテリジェンスを扱った続編が出るのかどうか、いつ出るかは『日本の死角』の売れ行きにもかかっています。
応援していただけると幸いと存じます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。