古典的名香ロシャス ファム。
濃厚かつスパイシーな冬向きの香りです。
香水のつけ方として「上半身につけない」と書いてあったりします。
きっと昔ながらの「香水」をイメージして書かれているのでしょう。
今どきのフレグランスは上の方でも問題ありませんが、ロシャスファムのような濃い~香りは確かに鼻に近いところにはつけられない。下半身にまとうぐらいでちょうどいい感じ。
妻エレーヌに捧げられた香水「ファム」
1941年、占領下のパリ。マルセル・ロシャスはパリのメトロでエレーヌと出会いました。
マルセルは一目ぼれの彼女の電話番号を聞き出すなど、モーレツにアタック!
エレーヌの回想によると、
「しばらくすると彼は『あなたと結婚して子どもを二人作りたい』と言った。すべてが彼の思いどおりになった」。
『犬夜叉』の弥勒みたいなヤツですね。
エレーヌは当時18歳。マルセルは40歳でした。
結婚の記念に、マルセルは「ファム」をエレーヌに贈りました。
「ファム」は若妻エレーヌに捧げられた香水だったのです。
参考文献
アンヌ・ダヴィス/ベルトラン・メヤ=スタブレ『フランス香水伝説物語』原書房
ロシャスファム(Rochas Femme)の香り
ファムはシプレ(≒渋々)の香り。プラムのフルーティノートを用いたところが、当時としては斬新でした。「悩ましい魅力と自身にあふれた女性を象徴するような、心に響く香調を持つ香水」だったといいます。
トップ | シナモン、ピーチ、プラム、アプリコット、ローズウッド、ベルガモット、レモン |
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ミドル | イランイラン、クローブ、ローズ、カーネーション、ローズマリー、アイリス、ジャスミン |
ベース | オークモス、ベンゾイン、パチョリ、レザー、アンバー、ムスク、バニラ |
トップは甘さが強く出るのですが、すぐにスパイシーな香りに変化し、時間が立つほどにシブ~くなっていきます。
プラムとピーチのフルーティさがウッディシプレの渋々さを和らげ、ローズやジャスミンなどフローラルな香調が華やかに広がり、シナモンやクローブなどのスパイスがピリ辛なアクセントをつけると同時に温かみを与えています。
調香師エドモンド・ルドニツカの初めての作品で、彼はこの香りによって一躍有名になりました。
リニューアルして軽くなった?
1944年に発売された古典ですが、1989年にリニューアルされました。
軽くなったという話ですが……。
今もかなり強烈です。
たとえるならインド産のお香のよう。
この古典的な名香を使いこなすには、ある程度の年齢を重ねる必要があるかも。
1日たつと穏やかで甘い香りになります。
だいへんに持続性があります
入浴前につけたのに、入浴後にもかすかに香っているというすさまじい吸着力。
ゴシゴシこすったらさすがに落ちますが、数回お湯にくぐらせるぐらいでは消えません。
布やティッシュに含ませて匂い袋のように使ってもいいでしょう。
数日後の消えそうで消えない残り香がまたイイ!
マルセル死後のロシャス
1955年マルセル・ロシャスが亡くなると、エレーヌは香水会社を引き継ぎます。フランス初の女性CEOなのだとか。
なお、1960年に「マダムロシャス」という新しい香水が世に出ますが、「ロシャス夫人」とはエレーヌのことです。この人の名前で売れると目される人気のある有名人だったということですね。(関連時期はこちら)
似た香り:ゲランのミツコ
渋々シプレといえばゲランのミツコ(関連記事はこちら)。
ミツコが世に出されたのは1919年、第一次世界大戦直後のことでした。
そしてロシャスのファムは1944年、ドイツ占領下というパリがドン底にあった頃に発売されました。
どちらも苦しい時期に世に出た香水です。
その意味ではデフレ不況やコロナに苦しんでいる今こそ、求められる香りかも。
へこんでいつときこそゴージャスな演出を!
ロシャス ファムもミツコも両方ともシブい香りですが、ミツコのほうが渋々です。
ミツコは最後の最後まで渋さが残りますが、ファムは時間が経つと穏やかで柔らかい香りになります。
個人的にはフルーティな甘さのあるロシャスファムのほうが使いやすく感じます。
なお、
「香りをまといたいけれど、すぐに飽きてしまう」
「ボトルを使い切らない」
「香水は、まず試してみないと……」
という方には、
カラリア 香りの定期便をお勧めいたします。
お好みのフレグランスを選んで少量だけ送ってもらうことができます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
少しでも香り選びの参考になれば幸いです。