本のレビュー

【本のレビュー】人間はどこから来たのか? 『サピエンス全史』 想像力がサピエンスを地上の覇者にした!? 人類発展の謎と未来を哲学する

サピエンス全史原書

イヌ科やネコ科はたくさんいるのに、なぜヒト科はホモ=サピエンス1種類しかいないのか。よく考えると不思議ですよね。

しかも、過去にはいろいろなヒト科がいたみたいですし。

世界的ベストセラー『サピエンス全史』

30カ国以上で刊行されている世界的ベストセラー『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社、2016年。原書はYuval Noah Harari “Sapiens: A Brief History of Humankind” 2011年)では、人類発展の謎と未来を哲学しています。

「ベストセラー」と言われる本を読むと、がっかりすることが多いので懐疑的だったのですが、これはおもしろかった!

「自分の先入観や固定観念、常識を覆され、視野が拡がり、新しい目で物事を眺められるようになる」
「目から鱗が落ちる」
「内容がわかりやすい」
まさにそのような醍醐味を満喫させてくれるのが本書。
(「訳者あとがき」より)

認知革命

たしかに、わかりやすく、おもしろい!

とくに衝撃的だったのは第1部の「認知革命」です。

のりあちゃん
のりあちゃん
それがホモ=サピエンス繁栄の謎の答え?

そう。

特別に強くも大きくもないヒト科の種族が並み居る強豪たちを押しのけて、なぜ頂点に立つことができたのか?

それも他の人類種でなく、なぜサピエンスだったのか?

結論から先に言いますと、「見えないものを見る力」がホモ=サピエンスを繁栄へと導いたのでした!

「想像力」というか「創造力」というか、そんなもの。

人類の進化は直線的ではない

かつて人類は猿人→原人→旧人→現生人類と進化したと習いましたが、近年、各地でいろいろな発見があり、そんなに直線的なものではないことがわかってきました。

200万年前から1万年前ごろまでは、いくつかの人類種が同時に存在していたのです。

ホモ=サピエンスが行くところ、生物が絶滅する

ホモ=サピエンスは20万年前ごろに東アフリカに現れました。

その後、サピエンスはアフリカの外へ出ていきますが、行く先々で大型動物が絶滅しています。動物だけでなく、異種の人類も。

地球各地の動物が滅亡

サピエンスが大虐殺を行ったという証拠はないものの、サピエンスの到達と各地の大型動物や他種人類の絶滅とはほぼ同時期に起こっているといいます。

のりあちゃん
のりあちゃん
偶然?

さあ~。でも、たぶん違うでしょ。

4万5000年前 ホモ=サピエンスがオーストラリア大陸に住みつく。当時は体長2mのカンガルーや、トラほどもあるフクロライオン、大型のコアラ、ダチョウの2倍ほどもある飛べない鳥たち、長さ5mに達するヘビ、2.5t級のウォンバットがいたが絶滅。

1万6000年前、ホモ=サピエンスがアメリカ大陸に住みつく。マンモスやマストドン、クマほどもあるげっ歯類、馬やラクダの群れ、アメリカライオン、サーベルタイガー、オオナマケモノほか多数の大型動物が絶滅。

ニュージーランドでも、マダガスカルでもカリブ海や太平洋の島々でもホモ=サピエンスが到着すると多数の生物が絶滅。

私たちは、生物史上最も危険な種なのです。

他のホモ属は絶滅。サピエンス1種が生き残る

3万年前、ネアンデルタール人が絶滅。

1万3000年前、ホモ=フローレシエンシスが絶滅。ホモ=サピエンスが唯一の人類種となる。

のりあちゃん
のりあちゃん
みんな死んじゃった。寂しい~

10万年前の地球には、少なくとも6つの異なるヒトの種が暮らしていたというのに、1万3000年前ごろから、人類は私たちホモ=サピエンスだけになってしまいました。

強さの秘密は「想像力」

『サピエンス全史』によると、サピエンス成功の秘密は7万年前の認知革命にあります。

人間の特徴として、二足歩行や言葉によるコミュニケーションなどが挙げられますが、「二足歩行」は人間以外の霊長類、ペンギンやダチョウのような飛べない鳥やカンガルーでもしていることです。

「言葉」にしても、他の人類も発せただろうと言われています。

のりあちゃん
のりあちゃん
じゃ、サピエンスは何が違ったの?

今、目の前にないことでも話す能力です。

「どこそこの誰それが何をした」と噂話をすることができる。
ウソやまったく想像上の物語を語ることができる。

のりあちゃん
のりあちゃん
それでどうして強くなるの?

フィクションが大集団をつなぐ

サピエンス以外の群れはせいぜい100~150ぐらいの個体数が限界だそうです。それ以上は統率がとれない。

しかし、サピエンスには「想像力」があって、「大義」をつむぎだします。

「正義のために」とか、「国のために」とか、「神のために」とか。これで納得してまとまるのはサピエンスだけらしい。

この7万年前に起こった認知革命がホモ=サピエンスを地球の覇者にした大変化でした。

想像力でフィクションを紡ぎ出すことによって大集団となり、向かうところ敵なしの種となりました。

そして、個体としてはより大きく力強かったとされるネアンデルタール人にも打ち勝つことができました。

以上が『サピエンス全史』の第1部「認知革命」の内容です。

納得できるフィクションをつくるのは難しい

昨今、メディアがあることないこと触れ回って人々をミスリーディングしています。

べつに今にはじまったことではなく、古くからデマや噂が人々を動かしてきました。

近年はSNSなどの発達により大メディアの嘘がすぐにバレるようになりましたが、信頼性はまだまだ新聞やテレビなどの大手メディアのほうが高いらしく、世論の形成には力があるようです。

それでも個人や小さな団体の発信力が高まり、人々が納得できるフィクションを作り上げるのは、だんだんと難しくなっていると言えるでしょう。

昔もフィクションを定着させるのは簡単ではありませんでした。
そして、信じられなくなったフィクションは統率力を失います。

アリは革命を起こさない

アリなど大集団をつくる生物はサピエンス以外にもいますが、アリの社会に革命はありません。女王アリが交替することはあっても、万国の働きアリが団結して女王アリを皆殺しにすることはない。

本能に基づいた行動をとっているだけなので、同種のアリの社会はどこも基本的に同じです。

しかし、人間はフィクションで集団をまとめるので、同じサピエンスでありながら各集団のあり方(文化)は場所によって時代によってさまざまです。

世界はフィクション対フィクション

大集団をまとめるにはフィクションが必要なのですね。

世界はフィクション対フィクション。
どのフィクションが正しいか、強いかを争っているように見えます。

 

そんなこんなをつらつら考えていたら文章が長くなってしまったので、続きはこちらへ。

国旗
【本のレビュー】国家とは?『サピエンス全史』で考える! 限りなくフィクションでない日本の強み『サピエンス全史』によればフィクションが大集団をまとめるという。「国家」もたいていの国ではフィクションだが、日本は……。 そこに日本の強みがある!...