郵便学者・内藤陽介先生の、ありそうでなかなかないインタビューが配信されました。
内藤先生ファン必見!
海外ニュース翻訳情報局の樺島万里子さん(YouTubeチャネル名:まりぞう)によるインタビューは、内藤先生個人にフォーカスして、ねほりんはほりん。
とても聞き上手な樺島さん。
内藤先生がご自分のお話をこんなにたっぷりなさったことは、(カメラの前では)ないのではないでしょうか。
私は内藤先生とはご著書、
『みんな大好き陰謀論 ダマされやすい人のためのリテラシー向上入門』(関連記事はこちら)
『誰もが知りたいQアノンの正体 みんな大好き陰謀論II』(関連記事はこちら)
二冊のお仕事でご一緒させていただいた縁があるし、ラジオやYouTubeなどでも、お話はたくさん伺っているつもりでしたが、このインタビュー動画には知らない話がたくさんありました。
郵便学者・作家 内藤陽介先生インタビュー
時間のある方は以下の動画を!
約1時間ありますので、お急ぎの方は以下の本ブログ記事でも感じをつかんでいただけると思います。
「郵便学者」は内藤先生が作った!?
知らなかった話のひとつは「郵便学者」の謎。
不思議に思っていたんですが、内藤先生が考え出した称号のようです。
英語ではphilately。
従来「切手収集」や「郵趣」という訳語しかなく、これでは趣味としてとらえられがちです。
それで「研究」をしていることを強調するために「郵便学者」を名乗りだしたのだそうです。
切手のおもしろさ
切手について調べていると、歴史などその国のありかたが浮かび上がってきます。
たとえば、どの地域で使われたかを調べれば発行国の勢力範囲が確定できます。
似たような分野に貨幣学がありますが、切手のほうがはるかに情報量が多く、資料としての価値が高い。
内藤先生のお話の要約です。私が言っているんじゃないですよ~。
貨幣は使われた痕跡が残りませんが、切手は消印が押されます。
インフレがあれば郵便料金も上昇しますから、額面そのものも経済・社会を語る。
スタンプなどから、事故があったので迂回して到着した、戦争中だから検閲された、災害被災地や戦地など配達できずに差出人に戻ってきたなどのことがわかります。
郵便物を見ていると、図柄として何が描かれているのか、いつ出たのか、印刷の技術はどうか、紙質は……などの情報から、その当時の状況が生生しく蘇るのです。
その国や地域に住んでいる人たちのバックグラウンドが反映され、国家の姿が見えてくる。
だそうです。
内藤陽介少年が郵便学者になるまで
幼年期には切手ブーム
1960~70年代には切手ブームがありました。
子どもも大人も切手が好きで、記念切手が発売されると郵便局には長蛇の列。
私も内藤先生と同世代ですから、よく覚えています。
近所のお兄さんが切手好きで、その影響で私も並んで買ったことが何回かあります。
子どもの小遣いではシート買いできず、親に頼んで買ってもらいました。
しかし親は「切手は使うものだ」と収集に理解はなかったので、買って見て楽しむことはできましたが、そのうち使われてしまいました。
内藤先生のお家はきっと切手収集にも理解があったのでしょう。うらやましい!
いつか本を書く!
内藤先生は子どもの頃から本が好きで、本を制作する側の人間になりたかったそうです。
いまならブログやSNSで発信されたのではないかと思いますが、当時は個人が発信するのは難しく、新聞や雑誌へ投稿するしかありませんでした。
内藤先生は雑誌に目をつけました。
かつて青少年向けの『スタンプクラブ』という雑誌があり、ジュニア編集委員の応募に募集して採用決定!
当時中学生の内藤先生はクイズの問題を作ったり、原稿を書いたりしたそうです。
子ども向けの切手の展覧会が毎年夏にあり、その企画運営にもたずさわりました。
ところが交通費とお菓子がもらえる程度で、あとはタダ働き!
しかし同じ趣味の友人知人ができ、楽しかったようですし、そのころのご友人とは今でもお付き合いがあるそうです。
80年代、鉄道・アニメ・切手は恥ずべき3大オタク!?
それなりに楽しんでいた内藤少年の世界が80年代に暗転しました。
切手に「オタク」のレッテルを貼られたのです。
いまでこそ「オタク」はひとつのことに特化して成果を上げている一芸に秀でた人というポジティブな意味も持ちえますが、当時、若者の間で「オタク」と言われたら社会的な死を意味しました。
『Hot-Dog』『Popeye』などの雑誌の特集で「女の子の前でカミングアウトしてはいけない趣味」として鉄道・アニメと並んで切手が挙がっていたのだとか。
この3大オタクは公言してはいけない趣味だったのです。
言ったらモテないので、どんなに興味があっても隠さなければならない。
逆境を逆手にとった企画で開眼
切手ブームが過ぎ去り、一転して奈落の底に突き落とされた内藤少年でしたが、めげません。
切手がマイナーな趣味になってしまったこの時代、企画展示も難しくなり、だれも東京にいなくなるお盆の時期にしか会場の空きがない。
しかたがないので、8月15日に戦争関連の企画展示を行いました。
苦し紛れの策でしたが「子どもが戦争について考えた」とのコンセプトが受けて東京ローカル局が取材に来るなど話題を集めたのでした。
戦意を高揚させるような戦時中の切手。
戦争が続き経済的に苦しくなると、切手や封筒、ハガキの品質が落ちてくる様子。
そんな逆境を逆手にとった企画展示がウケました。
内藤先生にとっても発見がありました。
「自分たちにとって当たり前のようなことでも世の中の人は意外と知らないものなのだな。これだけ反響があるのなら、この道で本が出せるかもしれない!」
それで、よりいっそう真面目に切手に取り組むようになりました。
大学ではイスラム学を専攻
内藤先生は東京大学文学部に進学し、イスラム学を専攻しました。
あるといえばある。ないといえばない。
「珍しいことをやったほうが本を出しやすい」のような動機みたいです。
当時イランイラク戦争など中東が揉めている時期でしたから、注目度はありました。
内藤先生と陰謀論
内藤先生は「チャンネルくらら」でレギュラー出演なさっています。
かつてユダヤ関係の長寿番組を担当なさっていて好評だったのですが、もともとは内藤先生の発案ではなかったようです。
「イスラム学科を出ているのならユダヤにも詳しいだろうと無茶ぶりをされた」とのこと。
それでも5回か10回で終わるはずが100回に!
内容をまとめて本にする話もあったのですが、うやむやになってしまった。
その後、ビジネス社さんから陰謀論の本を作らないかとの企画が持ち上がり、番組中のユダヤ陰謀論の部分だけ抜き出して本にしたのが『みんな大好き陰謀論 ダマサれやすい人のためのリテラシー向上入門』でした。
この本の評判がよかったのでシリーズ第二弾『誰もが知りたいQアノンの正体 みんな大好き陰謀論II』制作の運びとなりました。
専門以外のところで注目され複雑な心境
国際関係や歴史は仕込みの材料
国際関係や陰謀論についての本を出して好評を得ている内藤先生。
しかし、専門はあくまで切手や郵便事情にあるわけです。
その点、ご本人としては複雑な思いがあるようです。
切手に何が書かれているのか、どういう経緯で発行されたのかなど切手についての理解を深めるために国際関係や歴史を調べていったのに、そちらのほうが需要があって、本も売れている。
「本を出したい」という希望は叶ったけれど、切手の本も出しているけれど……。
内藤先生いわく「それはそれでありがたいんですが、国際関係や歴史は仕込みの材料であって、肝心の料理が食べてもらえないのはちょっと……」
さだまさしにも似た話
昔さだまさしが似たようなことを言っていました。
さださんは歌手ですがトークが面白い。
しかし、そのトークをさかんに褒められて閉口していました。
本人いわく、トークはアイスクリームについているウエハースのようなもの。
「あそこのアイスクリーム屋のウエハースおいしいよね」と言われても、アイスクリーム屋としてはうれしくないだろう、というわけです。
ちなみに「さだまさしトークベスト」などというアルバムもあります。
その他、内藤先生の謎がいっぱい解ける話
男の料理
内藤先生はSNSで自炊料理画像をアップしていらっしゃいます。
料理を始めたきっかけはお子さんが生まれたことなのだそうです。
そうではなくて、奥さんが子ども中心の食事を作るようになったので、自分が食べたいものは自分で作るしかなくなったのだとか。
着物には実用的な意味がある
内藤先生といえば、いつも素敵なお着物を召されています。
それがファッションは第一目的ではなく、切実かつ実用的な意味があるのです。
痛風のため足が腫れて、靴がはけないのだとか。
そんな事情から下駄をはき、それに合わせて着物を着ているというわけです。
そのほか切手の歴史や技術的な裏話などが盛りだくさん。
ぜひ動画をご覧ください。
内藤先生の謎がいろいろと解けます。
内藤先生の最新作
そんな内藤先生の最新作(2022年1月現在)はこれ:
『切手でたどる 郵便創業150年の歴史 Vol.2 戦後編』
Vol.2ですから、当然Vol.1もあります。
『切手でたどる 郵便創業150年の歴史 Vol.1 戦前編』
数々の有名人にインタビューする樺島万里子さん
樺島万里子さん、内藤先生のほかにも数々の有名人にインタビューしています。
たとえばゾマホンさん!
いったい何者なんでしょうか?
最後まで読んでくださってありがとうございました。