ライター部屋

倉山満『嘘だらけの池田勇人』扶桑社 戦後最高の総理大臣

こんにちは。ライターまぐのりあです。

カテゴリー「ライター部屋」では私が制作に関わった出版作品について紹介しています。

今回は倉山満先生の新刊『嘘だらけの池田勇人』(扶桑社)についてです。(2021年9月末発売予定。絶賛予約受付中)

倉山満先生の扶桑社からのベストセラー「嘘だらけシリーズ」は間違った歴史観によって歪んでしまった日本人の処方箋です。

これまでの本では『嘘だらけの日○近現代史』と題して、○の中には英・独・仏・露・中・韓・米が入っていました。

名誉ある「嘘だらけシリーズ」に連なる『嘘だらけの池田勇人』のアシスタントをさせていただき光栄に存じます。

イケハヤのことでしょ? 知られざる名宰相・池田勇人

本の制作中、知人に「池田勇人の本を作っているんだ」と言うと、

「へ~、あの人、おもしろいですよね。ツイッター、フォローしてます」

???

池田勇人があの世からツイッターしてる? なりすましにしても設定がシュールすぎる。

それに、なんか話が噛み合わない。

「誰の話?」

「イケハヤのことでしょ」

 

イケダハヤトというブロガー、ユーチューバーの方がいらっしゃるのですね。

略してイケハヤ。

年齢やライフスタイルにもよりますが、いまや元総理大臣の池田勇人よりもブロガーのイケダハヤトのほうが有名……なのかもしれない。

もっとも現代のイケダハヤトさんの本名も池田勇人だそうで、元総理にあやかって付けられたお名前であろうと推察いたします。

角栄礼賛に喝! 高度成長の種をまいたのは池田勇人

本書は現代のイケハヤさんではなく、1960年代前半の総理大臣・池田勇人(1899~1965)が主人公です。首相を辞めた後まもなく亡くなっているので回顧録などはありません。

著者いわく戦後、最高の総理大臣です。

 

倉山先生の著書に『桂太郎―日本政治史上、最高の総理大臣』(祥伝社、2020年)(リンク)があります。

日露戦争に勝った総理大臣ですから「日本政治史上、最高」です。

憲政史3部作
『桂太郎 日本政治史上、最高の総理大臣』倉山満著、祥伝社新書正当に評価されているとはいえない桂太郎。倉山満は「日本政治史上、最高の総理大臣」と讃えます。日清戦争に勝った首相は伊藤博文、日露戦争に勝った首相は桂太郎です。日本人として覚えておきたい。...

池田勇人は日露戦争に比べたらインパクトは小さいですが、高度経済成長を推し進め、日本を経済大国へと導いた功労者ですので「戦後最高」です。

そんな池田勇人なのに、なぜか認知度が低い。

もっと評価されてしかるべき池田勇人、今となっては忘れられている池田勇人の復権をめざしたのが本書です。

今日の日本があるのは池田勇人のおかげと言っても過言ではありません。

実際に高度成長がピークに達するのは、佐藤内閣のときですが、佐藤は池田が撒いた種の実りを刈り取ったに過ぎません。田中角栄に至っては、高度成長をつぶしました。

今の出版界では角栄の本を書けば売れるそうです。ロッキード事件の悪者が、いつのまにか英雄になっているのが不思議です。たしかに今の政治家に欠けている胆力のようなものがあったのかもしれませんが、総理大臣になってからの政治は褒められたものではないというのが著者の主張です。角栄礼賛に喝!

池田勇人は正直者

従来の『嘘だらけ日○近現代史」はタイトルからして「歴史をめぐる嘘を斬る!」コンセプトが明確です。

しかし、「嘘だらけ」の後に人名が入ったら、まるで池田勇人が嘘ばかりついていたような印象になりそうで、ちょっと不安です。

もちろん池田勇人について言われていることが嘘だらけなのであって、池田勇人は正直者です。

正直すぎて「貧乏人は麦を食え」と言ったと報道されてしまう。

貧乏人は麦を食え

年齢層の高い人は池田勇人といえば、「所得倍増」とともに「貧乏人は麦を食え」のような暴言を吐いた人との印象を強く持っています。

この「貧乏人は麦を食え」発言も、全体の趣旨を考えれば弱者切り捨て発言ではないのですが、マスコミに切り取られて「暴言」にされてしまったようなところがあります。そもそも池田自身、麦飯を食べているのです。詳しくは本で。

正直すぎて、政治的配慮が足りなかったというか、マスコミを敵にまわしてしまった時期もありました。しかし、そこから学んで総理大臣になってからは、マスコミ対策もバッチリ。人気の首相となります。

いい人ほど早死する

東京オリンピックを機に引退、死亡

惜しむらくは働きすぎて池田は病気になってしまい、1964年の東京オリンピックを花道に引退せざるをえなくなったことです。もし池田がもっと長生きしていたら、総理に復職しないまでも、政治的影響力を保ち続けたら、その後の日本は経済だけでなく政治大国にもなれていたかもしれない。

詳しくは本を読んでいただきたいのですが、惜しい政治家ほど早くに亡くなります。

タラ話をしても仕方がないのですが。

緒方竹虎も早死

池田の同時代人、緒方竹虎も早逝した政治家の一人。

吉田茂に続いて第2代自由党党首となったのが緒方竹虎でした。今では名前も忘れられていますが、江崎道朗先生が、最近、緒方竹虎についての本をお出しになりました。

江崎道朗『緒方竹虎と日本のインテリジェンス 情報なき国家は敗北する』(PHP新書)

倉山先生いわく「この人が早死しなかったら日本のインテリジェンスはもっとちゃんとしたものになったのに、という死んだ子の年を数えるような物悲しい本」です。

挫折だらけのエリート池田勇人

話を池田に戻します。

池田勇人は京都帝国大学を卒業後、大蔵官僚となり、戦後の1949(昭和24)年、衆議院議員初当選で大蔵大臣、1960(昭和35)年に総理大臣となります。

この経歴だけ見ると、何の苦労もなくエリートコースまっしぐらの人生に見えるかもしれませんが、実は幼い頃から試験に落ちまくりの挫折人生です。

のりあちゃん
のりあちゃん
これで文句言うの、贅沢じゃない?

何をもって挫折とするかにもよりますが、本を読めば納得していただけると思います。

京都大学卒なら御の字と思いますが、「東大にあらずんば人にあらず」の大蔵省ではいじめられたようです。

のりあちゃん
のりあちゃん
大蔵省に入らなければよかったのに

個人的な幸せを追い求めるなら、そうかもしれません。

伝記は時代を映す鏡

一人の人の人生を追っていくことで、その時代が見えてきます。

池田勇人という個人に興味のない人も、本書は時代を知る鍵となるでしょう。

戦前の池田を追っていくと、時代性や大蔵省末端の悲哀がわかります。

戦後のキーワードの印象が変わる!

GHQ、マッカーサー、吉田茂、シャウプ勧告、ドッジ・ライン……

終戦後のキーワードです。

名前や用語は聞いたことがあると思いますが、本書を読むと、教科書に書かれている印象とは違ったものに見えてくるでしょう。

吉田茂『回想十年』
【本のレビュー】吉田茂『回想十年』 意外と(?)面白い政治家の回顧録戦後の首相の中では評価の高い吉田茂の回顧録『回想十年』。読みやすい文章で戦前の外交官時代の話から戦後の占領時代から独立国へ、激動の時代の生き証人による記録。...

戦後の首相の印象が変わる!

意外と弱かった岸信介。日本をダメにした佐藤栄作。

読後、総理大臣の印象が変わります。

とくに田中角栄、福田赳夫、宮澤喜一など、のちの総理大臣が池田の時代にはパシリです。

総理になってからの偉そうな態度を覚えている世代には、かわいく見えるかも。

『嘘だらけの池田勇人』紹介動画

日本人は池田勇人の遺産で生きている~『嘘だらけの池田勇人』

池田勇人はスゴすぎて後世、印象に残らなかった総理大臣。問題を未然に防いでしまえば、問題が起こらないから、誰にも褒めてもらえないのでした。

 

「軍備よりまず経済」の真実~池田・ロバートソン会談

池田=ハト派は嘘!

「大失言」の真意

「貧乏人は麦を食え」と池田は言っていない。

オリンピック1964と2020

今回の東京2020オリンピックはコロナ禍の中、話題がコロナにさらわれた感じです。

そうでなければ前回1964年の東京オリンピックとその時代などに関して特集が組まれ、池田の業績にもスポットが当たったのではないでしょうか。

選手たちの活躍には拍手をおくりたいと思いますが、政治の劣化か、報道の劣化か、はたまた別の劣化かよくわかりませんが、「大丈夫なのか、ニッポン?」と思わざるを得ない今日このごろ。

かつては、こんな日本人がいた!

と思い出していただきたい一冊です。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

なお、本ブログは個人ブログであり、サイトの記述には著者とは異なる視点も含まれます。

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