【香水レビュー】
ゴージャスな香りをお探しですか?
温故知新:故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。
今回はフローラルの古典的名香をご紹介します。
古典といっても、どれも現代に通じる香りです。
華やかさナンバーワン:Jean Patou、ジョイ
ジャスミンやバラなど高価な天然香料をふんだんに使用した贅沢な香りジャンパトゥのジョイ(Joy)。
古くからある香りですが、古さを感じさせません。永遠にフローラル香水の代表であり続けるでしょう。
トップ | ブルガリアンローズ、イランイラン、チュベローズ |
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ミドル | ジャスミン、メイローズ |
ベース | ムスク、サンダルウッド |
ずっと香るフローラル
しいて言えば、しっかり香るという意味で古風なのかもしれません。
働く女性が当たり前になった現代、パーティやデートのときにだけでなく、オフィスでも使える香りとなると、どうしても当たり障りのない香りが選ばれてしまいます。
かつては濃厚で妖艶な香りが多々ありましたが、最近ではあまり見かけなくなりました。
ブランドを代表するような有名フレグランスは、さすがにお店に置いてありますが、売出し中の新作は、まずもって軽め。つけているのかどうかわからない香りが増えました。
ジョイは主張する香りですし、持続性があります。しかし、ツンとくるような刺激性の香りではなく、あくまでもお花。花の香りが嫌いな人はいないでしょう
だれもが「いい香り」と思うはず。
明るく健康的な華やかさで、ジョイに勝る香りは今持って少ない。
年代を問わない香り
まとう人の年齢・年代を問いません。
若い人がまとえば、かわいらしい。年齢を重ねるほどに増す気品もまた、この香りによってさらに際立つことでしょう。
ピンチをチャンスに変えたジャン・パトゥ
ジョイは1929年、世界大恐慌の年に発売されました。
ジョイの発売直前に、株式市場が大暴落。ジャンパトゥの顧客の多くは裕福なアメリカ人でしたから大打撃です。しかし、転んでもタダでは起きません。顧客の家の玄関先にジョイを配達するなどして話題となります。
マーケティングの手法としても面白い例ですね。
白い花束:Floris、ホワイトローズ
1730年創業の伝統あるフローリス。英国王室御用達ブランドでもあります。
ホワイトローズ(White Rose)も起源は古く1800年に発表されています。名前の通り、バラの香りが基調です。それをパウダリーなベースノートで温かみのある香りに仕上げています。古臭い感じもなく、むしろ現代的。華やかすぎず、気品ある、お花の香り。
控えめですが持続性があり、ずっと香ります。
トップ | グリーンノート、アルデハイド、カーネーション |
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ミドル | ローズ、スミレ、アイリス、ジャスミン |
ベース | パウダリーノート、ムスク、アンバー |
公式ページによると”re-introduced in 2004”。
何周回かして、またホワイトローズの時代がやってきた?
華やかさと落ち着きを兼ね備えた大人の香り: Jean Patou、ミル(1000)
ジャンパトゥのミル(1000)は、完成までに10年を要し、1000の試作を経て生み出されました。
同じジャン・パトゥでもジョイとはまったく異なる渋い香りなのに、ジョイと通じる華やかさがあります。ゲランのシャリマーの甘さをおさえたオリエンタル……のようにも感じられますが、香調はあくまでもフローラル。
トップ | オスマンサス、スミレ、アプリコット |
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ミドル | ローズ、ジャスミン、ゼラニウム、スズラン |
ベース | サンダルウッド、パチョリ、オーク |
ベースのパチョリやオークによって、ただのお花畑でない落ち着きが出ています。ジョイと違って年齢不問とはいかないかも。
30代以上の大人の女性に!
60代、70代、80代以上の方が使いこなせば、逆に若々しい香りです。
一口に何の香りとは言えない複雑さがありますが、暖かくホッとできる香り。
こんな香りの似合う女性になりたい。そう思わせる香りです。
ジョイが、花々が咲き誇る春の庭園で散歩するようなイメージだとすると、ミルは秋冬に暖炉のそばでくつろぐ一家団欒のひとときを連想させます。
豪華絢爛:Estee Lauder、プライベートコレクション チュベローズガーデニア
エスティローダーには、ただの「プライベートコレクション(Private Collection)」という香りもありますが、それとは別物です。
チュベローズガーデニア(Tuberose Gardenia)は花束に囲まれているような、花花花の香り。上品で清楚。ゴージャスに華やかなのに、全然ケバくない。
トップ | ネロリ、ライラック、ローズウッド |
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ミドル | チュベローズ、ガーデニア、オレンジブロッサム、ジャスミン、ウォーターリリー |
ベース | カーネーション、バニラ |
春先になると、まとってみたくなる香りです。この香りを嗅ぎながら目を閉じると、花束に顔をうずめているよう。
2007年発売なので、いわゆる「古典」ではありませんが、古典的なジャンパトゥのジョイに匹敵する華やかさですが、ただ、チュベローズガーデニアは日本での入手は困難なようです。
「香りをまといたいけれど、すぐに飽きてしまう」
「ボトルを使い切らない」
「香水は、まず試してみないと……」
という方には、カラリア 香りの定期便をお勧めいたします。
お好みのフレグランスを選んで少量だけ送ってもらうことができます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
少しでも香り選びの参考になれば幸いです。
参考文献
アンヌ・ダヴィス/ベルトラン・メヤ=スタブレ『フランス香水伝説物語』原書房、2018年